【勉強会後半:情報交換会】

勉強会の後半は、前田晃平氏、地方議員(元教員を含む)、保育研究家によって、活発な情報交換が行われました。複数メディアからの取材も入り、この問題を解決していく「熱」も共有する場となりました。自治体や保育・教育現場の課題が多数挙げられ、それに対する解決策や具体的な提案も多数出されました。

保育士・教員の採用を取り巻く現状と課題

■ 根っこの部分に、教員や保育士が足りない現状がある。人手不足の中、応募してくれること自体がありたがたいという現状ではなっている。

 

■ 人手不足を解決するにはやはり予算が必要で、子どもにどれだけ投資できるかというのが本質的な論点になる。

 

■ 保育士の採用、離職理由を調べたいところだが、私立保育園については事後報告なので調べることができない。

 

■ 保育園は株式会社が経営をしている場合も多い。そのため自治体が園の管理者教育を行わないとこの問題は現場に伝わらないと思う。

 

■ 構造として、教員採用は東京都で一括して行っている。もし仮に、基礎自治体の教育委員会に犯罪歴を調べたうえで配置してほしいといっても「東京都で採用を決めたから」と配置せざるを得ないだろう。

 

保育・教育現場の課題

■ 教育現場では、「まさかそんなことが起きるわけがない」という前提にたっている空気感がある。性犯罪についても「いたずら」の延長線上に捉えられているケースも。そもそも子どもたちがうまく説明できないことで表層化しにくい問題。

 

■ 子どもは遊んでくれる先生、話を聞いてくれる大人になつく。それを利用すれば、性的嗜好のある人は犯罪しやすい環境とも言える。子どもの前提が「先生大好き」だとすると、なおさら子どもを守らなきゃいけない。

 

■ 教育委員会は各学校の校長・副校長からの説明や定期的な見回りで学校現場を把握しているようだが、それでできているかどうかは疑問が残る。学校は性質上非常に閉鎖的なので、現場の把握が難しい。

 

■ 2018年度、わいせつ行為などで処分を受けた教員は282人に上り、過去最多となっている。

 

■ 性教育ができない教員や保育士が多い。まずはそこから教育研修を行う必要があるのではないか。

 

■ フローレンスの場合、保育士を直接雇用し、研修していて、性犯罪は起きていない。ただそれにはコストがかかる。子どもを大切にすることと経営が相反する状況になっている。

 

その他の課題

■ ベビーシッターの利用者への情報提供も必要なのではないか。フランスでは、犯歴証明書の提出を義務化せず、任意提出となっている。「このシッターは提出あり」とHPに公開しているので、提出のないシッターには予め注意することが可能。

 

■ 役所内での「子ども」案件に関する“縦割り”が大きな問題。教育委員会・子ども家庭部・保健所など、どうしても分断されてしまっている。

 

■ 子どもの権利が軽んじられていることが根底にあると思う。

 

上記課題に対して提案された解決策・今後の活動プラン

◎ 先ずは現状を広めること:各議会で意見書の提出を行うなど、私たちだけでなく議会全体が現状を知っている状態を目指す。

 

◎ 自治体のできる環境整備:「子どもの権利条約」の制定や「市の宣言」などで子どもの安全を守ることを明記する等。

 

◎ 相談機関など:役所内に「子どもの問題」ワンストップサービス部署をつくる。第三者機関の可能性をリサーチする(例:世田谷区の“せたホッと”)。

 

◎ 保育士の採用:(DBSができることを前提に)採用時に犯罪歴証明の提出を求める。

 

◎ 性教育の推進:性教育を推進していくことで、子どもたち自身が性犯罪から身を守ることを強化するとともに、大人も保育教育の現場で性犯罪があるということを知り現場での抑止力につなげる。

 

◎ 抑止力になりそうなツールの調査:福井市で実施された「教員チェックシート」(性的嗜好が分かるというもの)について調査してみる。設置費用や死角、誰が監視し指摘をするのかなど、課題も多いが、防犯カメラの設置も解決策の一つかもしれない。

 

◎ ベビーシッターの利用者ガイドライン:個人がベビーシッター会社や個人に依頼する際、どのような視点で選択するべきなのか、チェック項目や見定めのヒントを示す。

 

 

【ファシリテーター・たぞえ議員によるまとめ】

この問題は、前田さんがこの短期間に広く問題提起され、国へのロビイングも進めてこられました。国も動いてくれようとしていますが、実現するまでの道のりは長いです。その間も子どもたちを性犯罪から守るために、やれることをやっていきましょう。地方自治体での先進的な事例を探し国に提言することなども必要だと思います。今後もせたホッとや福井市での取り組みなど、事例の調査結果など情報交換し、粘り強く活動を続けていきたいと思います。

 

※本件はその後、2020年12月25日に閣議決定された「第5次男女共同参画基本計画」の中に、日本版DBSの概念が盛り込まれました。これからは、これを大義名分に活動を進めていけるフェーズへと移行しています。

 

<詳細は前田晃平さんのnoteにて>

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