小さくても「楽しい」まちへ~都竹淳也・岐阜県飛騨市長インタビュー(3)~

岐阜県飛騨市長 都竹淳也
(聞き手)一般社団法人 官民共創未来コンソーシアム 代表理事 小田理恵子

 

2023/10/18 「前向きな空気」でまちを満たす~都竹淳也・岐阜県飛騨市長インタビュー(1)~
2023/10/20 「前向きな空気」でまちを満たす~都竹淳也・岐阜県飛騨市長インタビュー(2)~
2023/10/23 小さくても「楽しい」まちへ~都竹淳也・岐阜県飛騨市長インタビュー(3)~
2023/10/26 小さくても「楽しい」まちへ~都竹淳也・岐阜県飛騨市長インタビュー(4)~

 


 

第1回第2回に引き続き、岐阜県飛騨市の都竹淳也市長のインタビューをお届けします(写真)。今回は庁内の組織づくりや人材育成、特に前向きな組織をつくるためのマネジメントに焦点を当てて、お話を伺いました。(聞き手=一般社団法人官民共創未来コンソーシアム代表理事・小田理恵子)

 

写真)都竹市長(上)へのインタビューはオンラインで行われた(出典:官民共創未来コンソーシアム)

 

職員の強みを徹底して見いだす

小田 飛騨市役所の組織風土について調べていたところ、インターンシップ説明会の動画を見つけました。そこには「ベンチャー市役所」「ドSな市役所(ド・スピード感/ド・攻めの姿勢/ド・誠実)」という文字が躍る資料が映し出されており、新しいことに挑戦する職員の姿がありありとイメージできました。このような風土を持つ行政組織はまれです。人材育成やマネジメントは、どのように進めてきたのですか?

都竹市長 職員は一人ひとり、強みが違います。私自身はそれぞれの強みを徹底して見いだすことが組織マネジメントの基本だと思っています。ですから、よく「使えない職員をどうするか」というようなことをおっしゃる方がいますが、「使えない職員」は一人もいないと考えています。

もちろん最初から一人ひとりの強みが分かるわけではありません。1年、2年、3年と共に仕事をしていくうちに、だんだんと見えてくるのです。そうすると、強みの組み合わせで登用することができます。

例えば、企画系の部局には新しいことを考えたり挑戦したりするのが得意な職員が不可欠ですが、役所には会計の手続きをしたり、条例や規則、要綱を作ったりする仕事も必要ですから、こうした細かい実務をこなすことが得意な職員と対にします。それでようやく業務が回るようになるので、組み合わせが重要です。

ちなみにこれは自慢ですが、私は「なぜ、そこに所属させているのか」という配置理由を、全職員について説明することができます。「廊下で擦れ違いざまに質問されても、即座に答えられるよ」と言っています。そこまで考え抜いて人事を行っています。

 

小田 何か新しい取り組みが生まれようとするタイミングでは、どう職員と関わるのですか?

都竹市長 自主的に考え、いろいろと物事を進められる職員にはあまり干渉しません。上がってきた案は基本的にすべてOKを出します。

 

小田 それは、すごいですね。先ほどおっしゃった「強みの最大化」によるものなのか、何かクリエーティブに関する修練を積んだものなのか、どちらでしょうか?

都竹市長 どちらもですが、組織全体の政策立案のレベルを上げることが何より重要ですから、そのために予算編成の仕組みそのものを変えることに一貫して取り組んできました。

一般的な予算編成の流れは、まず秋ごろに予算要求があり、それを財政課が、次に総務部が査定した後、首長のところに上がってきます。首長が目を通すのは大体、12月から1月ごろです。しかし、この時点で根本的に正す必要がある事項に気付いたとしても、もはや議論する時間が十分にありません。そうした詰めの甘さを防ぐため、飛騨市では政策協議中心の予算編成プロセスをつくり上げています。

まず6月から7月の段階で、私から来年度の予算編成の方針(テーマ)を発表します。それを踏まえて職員は夏の間、政策作りのための情報収集や勉強に徹します。そうして出来上がった政策案を、9月ごろから総合政策課と議論しながらブラッシュアップします。

そして10月から私との政策協議が始まり、全部局と徹底的に議論します。そのときに良いと思った案は通しますし、まだ詰めが甘いと思った案は練り直しを求めます。「予算を切る」という議論ではなく、どんな課題を解決しようとしているのか、関係者の意見は聞いたのか、市民に納得してもらえるのか、などと徹底的に問い掛けながら議論します。昨年度は私自身、政策協議に80時間以上を費やしました。

 

小田 まるでアスリートのような鍛えぶりですね。それなら職員のレベルは上がるでしょう。

都竹市長 今お伝えしたプロセスを7年、繰り返してきました。毎年レベルが上がっていくのを実感しています。特に若い職員が政策マインドを身に付けることができれば、将来の市役所の財産になっていきます。

 

小田 職員のモチベーションはいかがですか?

都竹市長 仕事は大変だと思いますが、全体的には非常に意欲的です。政策協議を続けていくと一人ひとりの得意・不得意が見えてきます。「この職員はイチから何かを考えるのは苦手だけど、人の意見をまとめることに関しては素晴らしい能力を持っているな」というように。その様子を見て、また人事を考えます。政策協議があるから人事ができると言っても過言ではありません。この繰り返しで組織全体をつくり上げてきました。

 

政策協議は関係者全員で

小田 飛騨市は早くから人口減少を前提にした挑戦的なまちづくりを行ってきましたが(第1回参照)、全国的にはこれから手を打つ自治体も少なくありません。そのような自治体の職員からは「幹部の意識が変わらず、挑戦しようにも前に進めない」といった声をよく聞きます。飛騨市では、こうしたボトルネックはなかったのでしょうか?

都竹市長 飛騨市は政策協議を関係者全員で行います。副市長から部長、課長、担当者、さらには総合政策課や財政課の職員も参加します。新規採用の若い職員も各課の議論に加わります。すると、その場にいる全員が議論の力点や私の見解を理解するわけです。また改めるべき点があれば、その場で指摘します。ですから、基本的にボトルネックとなるような人は出てきません。

 

小田 政策協議は部単位で行うのですか?

都竹市長 最初は課単位で時間を取り、係ごとに議論します。ここには部長以下、全員が参加していますから、協議内容は自動的に全員に共有されることになります。協議が1回で終わらず、再協議、再々協議と何度も繰り返す施策もあります。こういうコミュニケーションをずっと続けているので、どこかが決定的にボトルネックになることはないですね。

 

小田 都竹市長がその時間をどうやって捻出しているのか、不思議です。

都竹市長 政策協議を行う秋は行事も出張も多いので正直、大変です。新型コロナウイルス禍でオンライン会議という手法を身に付けたこともあり、出張の移動中にもオンライン会議の予定が入っています。

例えば岐阜市まで2時間かけて車で移動する間に、パソコンを膝の上に乗せてオンライン会議を行うこともあります。驚いたのが、東京のホテルに宿泊したときです。午前中に少し空き時間があったのですが、スケジュールを見たら「午前9時から2時間オンライン会議のため、チェックアウト時間を延長してください」とメモ書きされていました。そうやって時間をつくっています。

 

小田 休む暇がありませんね。

都竹市長 協議を繰り返さないと政策の質は担保できません。だから、ずっと続けます。人事でも同じことが言えます。異動で1人でもメンバーが代われば作り直しです。毎年、強みの組み合わせや関係性を構築し直しています。

 

小田 人事異動のサイクルについては、どのような考えをお持ちですか?

都竹市長 入庁してから「3年×3サイクル」で、まずはいろいろな部署へ異動してもらいます。最初は前職やこれまでの経験が生かせるところからスタートし、以降は全くタイプの異なる仕事を任せます。例えば最初は窓口業務からスタートし、次は農業系や観光系に異動するといった具合です。

それでだんだんと適性が見いだせてきたら、強みを生かせる部署に長期間、勤務してもらいます。長い職員で7~8年ほどです。そうして個人を見つつ組織も見渡し、全体の活性化につながるような異動を行います。管理職以上になるとポストが限られますから、個人の得意・不得意にかかわらず、異動する場合があります。

 

小田 外部人材の力を借りている分野もあるのでしょうか?

都竹市長 危機管理監という次長級の役職は、自衛官を退職した方を採用しています。任期付き採用職員という形で登用し、現在2人目の方が来られています。経験の蓄積が素晴らしい方で、頼りにしています。障害福祉の分野では、県の子ども相談センターの元所長を招いています。今後は農業の分野でも外部人材を招こうとしています。

 

第4回に続く

※本記事の出典:時事通信社「地方行政」2023年9月25日号

 


【プロフィール】

岐阜県飛騨市長・都竹 淳也(つづく じゅんや)

1967年生まれ。筑波大社会学類卒。89年岐阜県に入り、知事秘書、総合政策課長補佐、商工政策課長補佐、障がい児者医療推進室長などを歴任。2016年同県飛騨市長に初当選し、現在2期目。

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