【公園管理新時代】官と民に必要なマインドチェンジ~「エリア」で公園を管理できるのは誰か(下)

株式会社Public dots & Company PdC エバンジェリスト
SOWING WORKS 代表
元国土交通省 都市局 公園緑地・景観課長 町田誠
(聞き手)株式会社Public dots & Company代表取締役 伊藤大貴

2021/1/25  公園管理新時代―官と民に必要なマインドチェンジ(上)
2021/1/27  公園管理新時代―官と民に必要なマインドチェンジ(中)
2021/1/29  公園管理新時代―官と民に必要なマインドチェンジ(下)


市民と公務員が描く「理想の公園」の差

伊藤 公園の公益性についてはどう考えていらっしゃいますか?

町田 いかに税金の支出を小さくして、施設の使い勝手(効用)を大きくするかが大事。極端に言えば、支出はそのままか、少し増えたとしても、それを上回る効用があればいいですね。それが、市民が得られる幸福や豊かさになるわけです。

伊藤 市民との関わりの中で、一緒になって、いかに整備の効果が大きな公園を造るか、という話にはなりにくいですよね。情報があまりにも共有されていない部分もあると思います。

町田 公共事業の効果・効用(B/C:ビーバイシー・費用対効果)の測定が始まった1996〜98年ごろ、議論を深めるチャンスはあったと思います。公共投資の効果は、それまで「経済波及効果」が使われましたが、「費用便益」という言葉に変わった時に、本来ならもっとB/Cが可視化されるべきでした。しかしB/Cは「国が補助金を出すのに足る事業か」を判断するために使われた。当時、数字の内容や理由について、利用者、市民とは情報が共有されなかったですね。

伊藤 確かにそうでした。「何のために?」がいつしか忘れられてしまうんですね。

町田 そうです。流行り廃りはありますね。公園のB/Cの算定手法に僕は関わっているんですが、「鳥などの生き物がいる」「いざというときに防災の広場がある」ということも計算に入れますが、それらの値が小さ過ぎると反論されたことがありました。でも市民のアンケートからは、防災や自然環境にお金を支払う意思は、公園の効用全体の2割。一方で、「そこに行って遊ぶ」という部分では、効用の8割が積み上がるわけです。公園整備の合意形成上の課題です。

伊藤 市民との合意形成にオープンデータが活用されて、そのエリアの環境が可視化されると、議論がしやすいかもしれないですよね。

町田 ある公園が1年間に生み出している社会的効用がいくらかは算出できます。「この公園があることで、年間500万円の効果がありますが、600万円の管理費が掛かっています」という議論も可能。今でも事業化する時に算定していますが、「公園が社会価値をどれくらい生み出しているか」という感覚は、担当する公務員にはあまりないと思う。人がいない公園を見て、「将棋盤を置いたら、良い場所になるかな」という発想は、普通の公務員には難しい。公務員にとって「理想の公園」とは、何も壊れていない、苦情のない公園であって、利用者がいなくても平気な場合も多いのです。そういうのは誠実な態度ではない。

伊藤 苦情について言えば、バルセロナや台湾には、デジタルツールで民意を吸い上げる、書き込めるシステム(掲示板)があるんです。実際に民意を政策に反映させ、バルセロナでは年間何千ものプロジェクトが生まれています。

町田 すごくフェアなやり方ですよね。日本の自治体にあるのは、公開できない苦情リストだけ。苦情から生まれるのは、壊れた物を修理する仕事と、禁止看板を立てる仕事だけというのでは、あまりに悲しい。市民が意見を言い合えるフェアな掲示板は、日本にも導入できるとよいですね。

伊藤 実は今、日本に輸入しようとしていて、幾つかの自治体はやろうとしているところです。

どういうチームで公園管理を進めるのが良いか

伊藤 公園管理をエリアで経営的に進めるに当たり、事業者のフォーメーションも大事ですよね。

町田 そうですね。地元に密着した金融、造園業、コンサルタント、NPOなど、幅広い業界から手を挙げていただき、役割分担ができると理想的。エリアに対する意識の高い鉄道事業者などもある。Park-PFIは20年間の計画を立てるので、「先が見えないから不安」とおっしゃる方もいますが、想定より収益が出ているケースも多いようです。

伊藤 お金を出す人と知恵を出す人をうまくデザインできることが大事なのではないでしょうか。両者を同じ人が行うと、足元のビジネスが気になってしまって、短期間で回収したくなってしまいます。お金を出す人は長い物差しで測れる人、知恵を出す人は多角的な視点で企画できる人、という座組だとピタッとはまりますね。長い物差しという視点では、機関投資家に入ってもらうのもよいかもしれません。以前、ある機関投資家の方から「公園単体だとお金を出しにくいんだけど、これがグロス(全体)で見られて、赤字にせずキャッシュが回るとなれば、社会的に価値や意味があるから、運用先としてPark-PFIに資金提供できる」と言われたことがあります。

町田 投資家の方々に、「公園は社会的な何かが実現できる場」と思ってもらえたら有難いですね。全国の公園管理費は現在3800億円で、単純に自治体の数で割ると3億円程度。20年なら60億円の安定した仕事が、自治体ごとにあるということです。そこにPark-PFIなどを絡めていくと、実現できることが増えていくと思う。

伊藤 マクロで見たときに、公園管理費はここからもう下がらないとすれば、ポジティブに言うと、その金額は担保されているということですよね。公共アセット(資産)の管理・活用を検討する際、そこの数字が見えていると、民間の立場からすれば大きいと思います。ゼロベースではなく3800億円というベースがあり、点ではなく面で考えられるという前提を共有できれば、ビジネスサイドの意識も変わると思います。民間の側もマインドチェンジが必要というわけですね。

町田 小さい事業も大事にしていきたいです。地元の不動産屋さんと地元のレストランが組んでいるPark-PFIみたいな。実例も出てきていますから、もっと広がっていくといいなと思います。

伊藤 年明けには、各地で新しいプロジェクトが始まっていくと思いますので、また続報があればこの連載でも取り上げさせてください。

町田 もちろんです。良いお知らせができるよう、頑張ります!

 

  • 町中に点在する街区公園の維持管理が困難になってきた。
  • クレームが多い公園、防犯面に課題がある公園の管理運用を見直したい。
  • 民間の経験とノウハウを生かし人の集まる公園をつくりたい。

上記のような悩みをお持ちの自治体の皆さま、“PARK-SDGs”(Park-PFI生みの親・町田誠氏が考案したサスティナブルな公園管理手法)という名の新時代のソリューションをご提案させていただきます。ぜひお問い合わせください。

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<お問い合わせ>

株式会社Public dots & Company 公民連携推進室
メールアドレス: info@publicdots.com

 


【プロフィール】
町田 誠(まちだ・まこと)町田誠氏プロフィール写真

1982年旧建設省。旧国土庁、国土交通省等勤務の他、国際園芸・造園博覧会ジャパンフローラ2000、2005年日本国際博覧会(愛知万博)、全国都市緑化フェアTOKYO GREEN 2012において、会場整備、大型コンテンツのプロモート等に従事。さいたま市技監、東京都建設局公園緑地部長、国土交通省都市局公園緑地・景観課緑地環境室長、公園緑地・景観課長などを歴任。

 

伊藤大貴(いとう・ひろたか)伊藤大貴プロフィール写真
株式会社Public dots & Company代表取締役
元横浜市議会議員(3期10年)などを経て、2019年5月から現職。財政、park-PFIをはじめとした公共アセットの有効活用、創造都市戦略などに精通するほか、北欧を中心に企業と行政、市民の対話の場のデザインにも取り組んできた。著書に「日本の未来2019-2028 都市再生/地方創生編」(2019年、日経BP社)など多数。博報堂新規事業(スマートシティ)開発フェロー、フェリス女学院大非常勤講師なども務める。

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