資源は活用、負債は次世代に残さない!~山崎結子・青森県外ヶ浜町長インタビュー(3)~

青森県外ヶ浜町長 山崎結子
(聞き手)一般社団法人 官民共創未来コンソーシアム 代表理事 小田理恵子

 

2022/11/07 「しがらみのないフェアな町政」を目指して~山崎結子・青森県外ヶ浜町長インタビュー(1)~
2022/11/09 「しがらみのないフェアな町政」を目指して~山崎結子・青森県外ヶ浜町長インタビュー(2)~
2022/11/14 資源は活用、負債は次世代に残さない!~山崎結子・青森県外ヶ浜町長インタビュー(3)~
2022/11/16 資源は活用、負債は次世代に残さない!~山崎結子・青森県外ヶ浜町長インタビュー(4)~

 


 

第1回第2回に引き続き、青森県外ヶ浜町の山崎結子町長のインタビューをお届けします(写真1)。「しがらみのない町政を」という住民からの期待を受け、同県初の女性首長として、2017年4月に就任した山崎氏。今回は「負債を次世代に残さない」との思いから推し進める財政健全化の取り組みや、役場内におけるコミュニケーションの工夫、さらには産業振興に向けた展望について伺います。(聞き手=一般社団法人官民共創未来コンソーシアム代表理事・小田理恵子)

 

ハード整備は優先順位を付けて

小田 前回も少しお話しいただきましたが、財政健全化の取り組みについて、もう少し深掘りできればと思います。「負債を次世代に残さない」ことを重視し、特にハード整備に関する予算配分については慎重に検討されており、現在は外ヶ浜中央病院の新築移転とごみ処理施設の焼却炉交換に注力されているとのことでした。それぞれ、どのようなお考えで進めているのでしょうか?

山崎町長 外ヶ浜中央病院の新築移転については、緊縮財政の中でも十分な予算を確保しつつ、進めていかなければならないと考えています。というのも、この病院は地域の中核病院としての役割を担うからです。外ヶ浜中央病院は津軽半島の北部地域において、救急搬送や入院に対応できる唯一の医療機関です。

また介護福祉施設とも連携しており、地域の医療・介護・保健・福祉サービスにおいて重要な役割を担っています。このように住民の生命や健康に大きく関わる施設ですから、十分に機能させる必要があります。

しかしながら築35年が経過し、老朽化が進んでいます。これまで何度も増改築や修繕をしてきたため、院内の動線も混乱してきています。病院本来の機能を発揮するためには、全面的に新しくした方が良いと判断しました。

ごみ処理施設も焼却炉の老朽化が進んでいるため、新しい炉への交換を検討しています。ただし、こちらは最小限の予算で実施できればと考えています。長期的に見て、維持費が町財政をかなり圧迫することが予想されるからです。

 

写真1 オンラインのインタビューに答える山崎町長(出典:官民共創未来コンソーシアム)

 

小田 外ヶ浜町は単独でごみ処理施設を有しているのですね。

山崎町長 「グリーンハート外ヶ浜」という単独のごみ処理施設があります。この施設は10年ほど前に建てられましたが、維持費として年間約1億7000万円を必要としています。

 

小田 町の一般財源は年間50億円ほどですから、それ以上の支出は抑えたいところですね。

山崎町長 本当は広域でごみ処理できればよいのですが、近隣自治体との合意形成が難しい状況です。そんな中、炉の耐用年数が迫ってきたため、交換する必要があります。これに関してはなるべく支出を抑えたいと思っており、最新型の溶融炉の追加設置は考えていません。焼却炉のみを新しい物に交換する予定です。

 

小田 現在は環境省の指導などで家庭から出るごみの量が減っていると聞きますし、今後の人口減少を考慮すると、単独施設に掛かる費用はなるべく抑えておきたいところです。ハードに関する予算調整について、住民はどのように捉えているのでしょうか?

山崎町長 興味のある方は広報を読み込み、「財政健全化に向けて頑張っている」といった感想をくださいます。具体的な数字をあまり把握されていない方も「今、町がお金をためているのは病院新築のためだ」と理解を示してくださっています。

 

小田 将来を見据えて基金を積み立てていることが、一人でも多くの住民に伝わるとよいですね。

 

市町村合併に対する世代間ギャップ

小田 津軽半島の地図を見て驚いたのですが、外ヶ浜町は飛び地を抱えているのですね(写真2)。

山崎町長 05年3月に蟹田町、平舘村、三厩村が合併し、外ヶ浜町になりました。その際、旧蟹田町・旧平舘村のエリアと旧三厩村のエリアに町域が分かれました。

 

写真2 外ヶ浜町の公式ウェブサイトには飛び地がデザインされている

 

小田 現在の町域になったのは多くの調整を経てのことだと想像できます。やはり「ここは自分たちの地域だ」とする意識が強いのでしょうか。

山崎町長 年代によって意識は違います。比較的高齢の方は今でも合併前の境目を意識します。20代以下は全部を含めての外ヶ浜だと感じている方が多いです。

 

小田 やはり世代間の意識に違いがあるのですね。市町村合併の余波が顕著に表れるのが公共施設の統廃合ではないかと思います。この点について、外ヶ浜町はいかがですか?

山崎町長 公共施設の統廃合を課題に感じる首長は多いですね。外ヶ浜町の場合は、出張所はなくさないつもりです。というのも、飛び地なので1カ所に絞ってしまうと降雪の際の来庁が難しくなるからです。ただし、様子を見ながら機能集約はしていければと思っています。

その他の施設については統廃合を進めていければと考えています。例えば浄水場や温泉施設です。旧町村でそれぞれ保有していたため、今は町内に3カ所ずつある状況です。こちらもやはりリフォームなどで維持費が掛かりますから、負債を次世代に残さないような対応が必要です。

 

小田 市町村合併に必ずと言っていいほど伴うのが、住民感情のケアと施設の統廃合問題です。これは日本全体が抱える課題だと言えます。外ヶ浜町の場合は飛び地があるので、住民が町を一つとして捉え、資源を共有するに至るまでには相当、粘り強い説明が必要でしょう。そんな中、町のためにと考えを貫き通す山崎町長のモチベーションには感心させられます。

山崎町長 どちらかと言えば、自分のためだけの努力よりも「皆のためになる」という努力に対し、モチベーションが上がる気質だと思っています。私一人が喜ぶことよりも、多くの人が喜ぶことを成し遂げた方が達成感もありますから。

 

第4回に続く

※本記事の出典:時事通信社「地方行政」2022年10月3日号

 


【プロフィール】

青森県外ヶ浜町長・山崎 結子(やまざき ゆいこ)

1981年東京都世田谷区生まれ。成城大文芸学部文化史学科卒。青森県を地盤に曽祖父、祖父、父が国会議員を務めるなど政治が身近な環境で育つ。2017年3月同県外ヶ浜町長選で初当選し、同県初の女性首長として翌4月に就任。現在2期目。

スポンサーエリア
おすすめの記事