本記事は、2020年4月5日の横須賀市議会議員 小林のぶゆき氏のBlog記事を全国向けに加筆修正して寄稿頂いたものです。
新型コロナウィルスにより、経済に影響が出て追い込まれている方も多いと思います。
- 職を失った従業員
- 仕事と売上が激減した個人事業主
- 倒産も脳裏をよぎる中小企業経営者
そんな行きづまってしまったあなたに、伝えたい大事なことが一つだけあります。
自殺しないでください。大丈夫です。
何がどう大丈夫なのか?
以下に書きますので、必要な部分だけ読んでください。
読む余裕がない方は、自分のまちの市区町村議員や都道府県議に相談すると、きっと親身になって対応してくれます。
でも、「議員もいっぱいいるから、誰に相談したらいいかわからない……」という方もいるでしょう。そんなときは、自分と年齢とか性別とか経歴が似た人とか、チラシとかSNSとかで情報発信を積極的にしている人を選ぶのもいいかもしれませんね。
→政治山「統一地方選挙!良い候補者選び10の基準」 https://seijiyama.jp/article/columns/lm/lm20150304.html
よくわからないから、まずはとにかく相談したい!
生活困窮者自立支援制度
「議員なんて信用してないし、目の前の暮らしで一杯一杯で、いちいちこんな記事なんて読んでられない!」という方もいるでしょう。
そんな方には、国主導でワンストップの窓口が各地に作られています。地域によってNPOや社協や市町村の役場など窓口が違いますが、とにかくここに相談すれば色々な機関や制度につないでくれるでしょう。
→自立相談支援機関 相談窓口一覧 https://www.mhlw.go.jp/content/000614516.pdf
日本の福祉制度は整っています。
具体的制度をご紹介する前に、大前提を言いますね。
戦後、日本は日本国憲法を制定しました。これは、国民を大事にするために作ったものです。この第25条にはこう書いてあります。
「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」
併せて、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」とも書いてあります。ですから、国も地方も、憲法に則ってさまざまな福祉制度を整えてきました。不十分な面もありますが、先進国として一定の水準には達しています。
だから、死ななくて大丈夫なんです。年齢・性別・仕事の有無など関係なく、全ての国民にその権利があります。
以下に紹介している制度は、いずれも今回のコロナ問題のために作られた制度ではなく、前からあるものです。コロナ対策で新たな制度も議論されていますが、未確定ですし、それらの情報なら入ってくるでしょう。ですから、ここでは意外と知られていない基礎的な制度をご紹介します。
※以下で「市」と書いてあるものは、東京23区を含み、町村の方については基本的に都道府県の福祉事務所と読み替えてください。
いざとなったら、生活保護がある!
【市の制度】
収入がなくなって、働けない状況でも、最終的には生活保護をもらえば暮らせます。これは、大きな安心につながると思います。保険があるからリスクも取れる。事業に失敗しても、借金を抱えても、命までは取られません。
世の中には生活保護を受けさせないように「水際作戦」をする市もあるようですが、ちょっとした知識を持っていれば引っ掛かりません。たとえば、「申請書だけならだれでも提出する権利があり断れないはずだ!申請だけはします!」とかね。
不安な方は、議員や生活困窮者支援のNPOに同行してもらうと安心です。
→生活保護制度 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/seikatuhogo/index.html
抱えきれない借金なら、自己破産もできる!
【国の制度】
どんなに借金ができてしまっても、そのために命を落とす必要はありません。どうにも返せなくなれば、自己破産もできます。自己破産をすると、いくつか制限されることもありますが、命を絶つよりよっぽどいい。破産法は、まさに自殺防止のために作られました。
実際に自己破産しなくても、「どうにもならなくなったら、リセットすればいいさ」と思えば気が楽じゃないですか?
失職した人には、給付や職業訓練
【国の制度】
私自身、最初の就職先を3年で辞めた後、色々な制度のお世話になりました。3か月で仕事が見つからず雇用保険で給付を受け、その後、半年間の職業訓練(環境マネジメント)とその間の給付も受けてスキルを上げ、環境コンサルティング会社へ再就職できました。
なお、会社から「辞めてほしい」と言われたら、自己都合ではなく、できれば会社都合にしてください。すぐに給付が受けられます。非正規雇用で雇用保険に入っていない方は基本的に給付は受けられませんが、職業訓練は受けられます。しかも、職業訓練期間中の給付が出る場合もあります。
あと、非正規雇用で健康保険や厚生年金は入っていなくても、会社側の負担の小さい雇用保険だけは入れてくれている場合もありますので念のため確認してみてください。私もフリーター時代にそうしてもらっていました。
→雇用保険制度 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/koyouhoken/index_00003.html
→求職者支援制度 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyushokusha_shien/index.html
→教育訓練給付制度 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/kyouiku.html
家賃を代わりに払ってくれる!住居確保給付金
【市の制度】
失職したり廃業したりして、収入が途絶え、家賃が払えない人には市が代わりに大家さんに払ってくれます。雇用保険に入ってない非正規や自営業の人でも大丈夫です。
住んでいる場所や家族構成などによって上限があり、私の住む横須賀市だと単身者54,000~6人世帯62,000円程度。東京23区だとこれより数千円高く、地方だと数千円低いイメージです。ほとんどの方にとって家賃の全額はまかなえない額でしょうし、もらえる条件もなかなか厳しいです。たたし、3か月間(最大9か月間)の家賃を肩代わりしてもらえたら結構助かると思うので、自分に当てはまるか調べてみては。
→住居確保給付金 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12000000-Shakaiengokyoku-Shakai/0914_shiryou03_1.pdf
※ちなみに、不動産契約は相対の契約なので、大家と交渉して店舗や住居の家賃減額や猶予を求める動きも出ているようですね。国も「国土交通省としまして、ビル所有者等に対し、飲食業を営まれている皆さんが大変な状況で、テナントの賃料支払いが大変負担になっているとの御要望もいただいておりますので、賃料支払いの猶予など柔軟な措置を検討いただくよう、不動産関連団体を通じまして、本日、要請を行うことといたしました。」と発表(3/31赤羽大臣会見要旨)。http://www.mlit.go.jp/report/interview/daijin200331.html 欧米では家賃ストライキの動きや不払いに退去を迫る動きも出ているようで、https://front-row.jp/_ct/17352009 スペインでは家賃滞納時の強制退去禁止措置をとるなどして混乱緩和に努めているようです。https://www.jiji.com/jc/article?k=2020040100253&g=int
お金を借りて、生活を立て直そう。貸付制度
【社協の制度】
生活保護になると色々な制限もあるので、その手前で踏みとどまれるなら、そうしたいですよね。「当面のお金さえ借りられれば生活を立て直せる」という方には各種貸付制度があります。
各地の社会福祉協議会が窓口となっていて、必要な要件は色々ありますが、無利子か低利子なので、サラ金や街金でつまむよりもはるかに条件がいい。生活福祉資金等貸付というもので、総合支援資金、緊急小口資金、福祉資金、教育支援資金、不動産担保型生活資金など、様々な種類がありますので、一度、自分に当てはまるか調べてみては。
→生活福祉資金 https://www.shakyo.or.jp/guide/shikin/seikatsu/index.html
【都道府県の制度】(政令指定都市と中核市の場合は市の制度)
また、ひとり親の方の限定とはなってしまいますが、都道府県の貸付制度もあります。
わかりやすく、もろもろはしょって説明すると、資格や学歴があったほうがいい仕事に就けますよね? でも、お金がなくて学校に行けなかったら、資格は取れませんよね? だから、シングルマザーに看護師・医療事務といった安定して待遇もいい仕事に就くための資格を取ってもらったり、お母さんが無理なら子どもにいい教育を施して「貧困の連鎖」を防いでもらったりするため、無利子でお金貸しますよ。そんな制度です(有利子の場合もあり)。
「コロナで仕事失っちゃったけど、この機にじっくり資格でも取って新しくチャレンジしようかな?」なんていう方にオススメです。
→母子父子寡婦福祉資金貸付 http://zenbo.org/14keizai.html
税金や保険料の支払い、ちょっと待って!猶予制度と減免制度
【市の制度】【都道府県の制度】【国の制度】
住民税や健康保険料など、たいがいの税金・保険料は前年の所得に応じて金額が変わります。そうすると、「コロナのせいで経済的にキビシイというのに、去年は絶好調で給料や売上良かったから税金も保険料も高くて払えないよ!」ということが起こりがちです。私も、コロナ前のことですがこの手の相談を何件も受けています。
そこで、納税や国民健康保険料・国民年金を、先延ばししてもらうことができます。銀行に相談して住宅ローンの支払いをリスケしてもらうようなものです。
しかも、税金系には減免はありませんが、国民健康保険料と国民年金については、条件によっては減免もあり得ます。調べて損はありません。
→市区町村税(市民税など)の猶予制度(横須賀市の事例) https://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/2320/g_info/documents/sizeiyuuyo.pdf
→都道府県税(県民税など)の猶予制度(神奈川県の事例) https://www.pref.kanagawa.jp/zei/kenzei/a005/002.html
→国税(所得税・法人税・消費税など)の猶予制度 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kansensho/pdf/0020003-044_02.pdf
→国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度 https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/menjo/20150428.html
→国民健康保険料の減額・免除・猶予(横須賀市の事例) https://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/3070/g_info/l100050079.html
※組合健保や共済健保の方は、それぞれの健保によって制度が違うはずです。
医療費には実は上限がある。高額療養費制度
【国の制度】
健康保険で自己負担は1割~3割に抑えられているとはいえ、それでも手術や入院をすれば高額になるときがありますよね。民間の医療保険に入っていてもカバーされない病気もあるでしょう。そして、コロナにかかると医療費もバカにならないとも言われます。
そんなときに、意外と知られていませんが、医療費の自己負担額には月額の上限があるんです。世帯の所得に応じて違うのですが、所得の低い世帯なら月に1万5,000円以上はかかりません。所得が一番高い層でも25万円+αが上限です。国民健康保険だけでなく、組合健保や共済健保も対象です。確認してみましょう。
奨学金を追加でもらおう。払っている人はリスケしよう。
【日本学生支援機構の制度】
私は恵まれていて、しかも長男だったので奨学金を使わずに小中高大まで出ました。その分、妹にシワ寄せが行って、妹は大学と大学院で奨学金という名の「学資ローン」を借りていました。かわいそうに。私のインターン生の多くも、この「学資ローン」を利用していて将来が不安そうです。お子さんが利用されている市民も多いでしょう。
そして、私の頃よりも今は学費が高騰して、国立大すら年額54万円もするらしく、私立大学や専門学校だとなおのことみたいですね。先進国では公立大学は学費無料のケースも多いので、ニッポンの将来を考えると「そこは投資しとこうよ」と思います。そして、国内最大手で実質上公営の日本学生支援機構でさえ、給付は1%程度で、無利子が3割、有利子が7割という「学資ローン」中心であることに、批判の声は多いと思います。
さて、それはそれとして、日本学生支援機構もコロナ問題に対応しているようです。
- 給付については、コロナ問題を受けて急に失職した家庭などのために通年で新規申請を受け付けるようです。
- 貸与については、コロナ問題の前からある制度ですが、緊急・応急で新規申請を受け付ける制度があります。
- すでに卒業して借りた奨学金を返している方には、返済額の減額やリスケに応じているようです。
→日本学生支援機構「新型コロナウィルス感染症への対応について(4月2日14時更新)」 https://www.jasso.go.jp/sp/news/1327624_5021.html
自営業者や中小企業の方々の支援制度
【市の制度】【都道府県の制度】【国の制度】
以上は、従業員・フリーランス・自営業・中小企業経営者を問わず、生活者側として使える制度でした。この他に、経営者側として使える制度もあります。
これについては、目まぐるしく動いている分野であり、知ったかぶりしてここに書くと急速に情報が古くなると思います。そのため、要点だけお伝えします。
基本的に、経済対策は地方自治体よりも国が主導する分野です。そのため、まずは国の情報をあたって下さい。
→経済産業省「新型コロナウイルス感染症関連」 https://www.meti.go.jp/covid-19/index.html
また、各都道府県や市町村でも独自の中小企業支援を実施していると思います。
その他、政府系の金融機関である日本政策投資銀行や各地の金融機関による融資などもあります。
しかし、こうした情報を網羅的に追うのは、正直大変だと思います。そこで、ご自身の地域の商工会議所が横断的に情報を収集して、自分の地域の中小企業が使える支援制度を情報提供しているはずですので、そこに相談してみてはいかがでしょうか。
→全国の商工会議所一覧 https://www5.cin.or.jp/ccilist
最後に
なにしろ、人間ってどうにか生きてはいけます。
逆に、どうせ死ぬときはあっさり死んでしまいます。
ですから、早まらないで誰かに相談してください。
「そんな制度の問題じゃないんだよ!気持ちが追い詰められているんだよ!」という場合もあると思います。どうにもならなくなったら、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)に電話してみてはいかがでしょうか。
国が信用できなければ、各地のNPOが実施している電話相談もあります。下記でいくつか紹介されています。
→厚生労働省「自殺対策>電話相談」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/soudan_tel.html
以上です。
筆者プロフィール
横須賀市議会議員 小林伸行(こばやし・のぶゆき)
1975年福島県生。筑波大卒。地域情報誌と環境コンサルティングに携わった後、政治を志す。政策秘書資格試験に合格後、国会議員秘書を経て2011年より現職。無所属三期目。マニフェスト大賞実行委員会事務局長。かながわオープンデータ推進地方議員研究会所属。株式会社Public dots & Companyのサロンメンバー。