コロナ禍における自治体の情報発信の在り方(中)

コロナ禍における自治体の情報発信の在り方
タイムリーに分かりやすく市民に情報を伝えていくために

大阪府枚方市議会議員
木村 亮太

2020/9/7 コロナ禍における自治体の情報発信の在り方(上)
2020/9/9 コロナ禍における自治体の情報発信の在り方(中)
2020/9/11 コロナ禍における自治体の情報発信の在り方(下)


2.枚方市の情報発信の現状と課題について

枚方市はコールセンターのFAQサイトと、HPの連携が不足していた

枚方市の情報発信や市民からの問い合わせに対応する体制として、メインとなるのは市の公式HPと市のコールセンターです。それぞれについての現状と課題について説明します。

枚方市は新型コロナウイルスの感染拡大の前から、コールセンターを外部委託しています。問い合わせのあった内容については、その都度FAQ(よくある質問)に追加されており、電話応対マニュアルが更新されていました。また、外部委託しているコールセンターのHP上でもよくある質問として、FAQサイトが更新されています。課題としては、コールセンターのFAQサイトと市のHPがリンクしていないということがあります。枚方市のHPは、市の広報担当課がメインに運用しています。一方で、コールセンターのFAQサイトは、広報担当課とは別の部署である広聴担当課が民間委託した会社によって運営されています。そのため、FAQに載っていない新規の問い合わせについては、コールセンターから担当課につなぎ、担当課が答え、その内容を都度FAQに追加するというフローは定着していました。しかし、市のHPの当該情報が掲載されているページが、問い合わせの内容を踏まえて更新されるというフローにはなっていませんでした。市HPのトップにFAQサイトへのリンクバナーは張っていますが、FAQサイトのトップに行くため当該情報ページからも関連するFAQのページに行けるようにするべきであったと思います。将来的には音声認識を用いて、市民と職員がやりとりをした内容をFAQに自動生成し、HPの該当ページの情報についてもその都度更新する、もしくは、該当ページの下に対応するFAQのリンクを張っておくことも技術的に可能になるのではないかと考えています。

HP上だけでも運用の改善は可能

市HPへのアクセスの内容を踏まえた対応も、可能かつ必要だと考えています。トップページからどのページがクリックされているか、多い検索ワードは何かなどを有事の際は日々調べ、市民の方が知りたい情報にたどり着きやすいHPを作ることが必要です。例えば、枚方市HPのトップページにある検索窓で、5月の検索キーワードのランキングは10のうち五つが特別定額給付金に関連するワードでした。市民の方からすると、特別定額給付金の申請書がいつ来るのかや、給付はいつになるのか知りたかったのだと思います。検索して、特別定額給付金のページが見つかればよいのですが、検索するキーワードによっては特別定額給付金のページがヒットしませんでした。具体的に言うと、「特別定額給付金」という正式名称で検索するとヒットするのですが、「給付金10万円」だとヒットしないという状態でした。このため、検索結果のクリック率も低いときには20%台だったことがあります。つまり、定額給付金の関連キーワードで検索したものの、知りたい情報にたどり着けた人は20%しかいなかったということです。

こういう状況を解析し、改善策として、例えば、特別定額給付金へのページに移動できるバナーをトップページの目立つ位置に出しておくとか、正確に「特別定額給付金」と検索しなくても、「10万円」や「定額給付金」といった、関連のキーワードでも検索で引っ掛かるようにランディングページの修正をその都度加えるなどの対応が必要です。この件については議会で取り上げ、その後にすぐ市に対応していただきました。この特別定額給付金の問題のみならず、市民が知りたい情報は何かを把握し、その情報を探しやすい場所に、分かりやすい説明と共に掲載する必要があります。

「下」へつづく


プロフィール
木村 亮太(きむら・りょうた)
大阪府枚方市議会議員
1984年大阪府枚方市生まれ、大阪大学経済学部を卒業し、ベンチャー企業に入社。2011年枚方市議会議員選挙に立候補しトップ当選。現在に至る。
2015年グロービス経営大学院 修了(経営学修士:MBA)
2018年京都大学大学院 公共政策教育部 公共政策専攻 修了(公共政策修士)
未来に責任を持った政治を掲げ、EBPM(証拠に基づく政策立案)、行財政改革、人事給与制度改革、教育子育ての充実、持続可能な社会保障制度の構築のために予防医療・介護予防、また、ICTを活用したまちづくりを提言している。

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