コロナ禍における自治体の情報発信の在り方(上)

コロナ禍における自治体の情報発信の在り方
タイムリーに分かりやすく市民に情報を伝えていくために

大阪府枚方市議会議員
木村 亮太

2020/9/7 コロナ禍における自治体の情報発信の在り方(上)
2020/9/9 コロナ禍における自治体の情報発信の在り方(中)
2020/9/11 コロナ禍における自治体の情報発信の在り方(下)


2020年1月16日に日本における、新型コロナウイルスの最初の感染者が発表され、その後は全国各地でも感染者が確認され、政府、自治体は感染拡大防止のための対応に追われました。政府の対応・支援策が日々変化する中で国民も混乱を極めていますが、このように状況が都度変わる中で、住民との距離が近い地方自治体での対応と果たすべき役割は住民とのコミュニケーションをしっかりと取り、分かりやすい情報発信をすることだと考えます。第2波、第3波への備え、また、今後の自然災害時への備えとしても地方自治体はこれまで以上に情報発信や市民とのコミュニケーションを意識する必要があります(2020年8月3日記)。

大阪府枚方市という自治体の現状や課題、また他市の事例を交えながら提案や今後の在り方をまとめていきます。

1.政府の発表のたびに、自治体には対応が必要となり、問い合わせが殺到

新型コロナウイルスは未知のウイルスであり、感染拡大の状況や経済への影響を踏まえて、都度対応策や支援策が変わることについては致し方ない部分があると考えています。しかし、対応策が変わるたびに、国民や自治体がその対応に追われるのが事実です。実際の自治体ではどのようなことが起きていたのか、課題は何か、改善点はあるのか、今後の展望などについてまとめています。

例えば、特別定額給付金についてです。当初は、所得の減少幅や年間の所得の条件が付くなど、対象世帯を限定した給付金が予定されていました。1世帯につき30万円で名称も「生活支援臨時給付金」だったものが、最終的には国民一律で1人当たり10万円支給の「特別定額給付金」となりました。報道が先行していたため、政府の最終決定や予算が成立していない状況でも、30万円の段階では、「私の世帯は給付対象なのか」「給付はいつからされるのか」といった問い合わせ、また10万円が決定してからは、「どのように申請したらいいのか」「申請書が手元に届くのはいつか」といった問い合わせが、自治体に殺到していました。

次に、学校の休業についても、2月27日に安倍晋三首相が3月2日から春休みまでの一斉休校を発表してから対応に追われました。枚方市の公立小中学校の休業の推移については、以下のようになっています。

①3月2日(月)〜3月24日(火)休業期間
②4月8日(水)〜5月6日(水)休業期間
③5月7日(木)〜5月10日(日)休業期間
④5月11日(月)〜5月31日(日)来校日を設定し、児童生徒の健康観察、ICT(情報通信技術)・プリントを活用した課題の提示や学習状況の確認
⑤6月1日(月)〜6月12日(金)分散登校・短縮授業(3時間以内)
⑥6月15日(月)以降は感染対策を実施した上で通常授業

期間が区切られているのは、そのたびに当該期間の休業が発表されたためです。最初からゴールデンウイーク明けまでの休業が決まっていたのではなく、国や府の動向や感染状況を踏まえて、まずは3月24日まで休業、次に5月6日まで休業、というような発表になっていました。それに伴い、終業式は実施するのか、入学式は開催するのか、クラス替えの発表はいつするのか、休業中において学習の遅れがないように自宅学習をするのか、またそのための教科書や課題をどのように手渡すのか、などを決めて連絡する必要があります。

全国の公立小中学校の多くには、1人1台のPC(パソコン)端末の環境がありません。環境が整っていればその都度、児童生徒の手元に教科書の内容や課題を送信していけばいいですが、現環境下では不可能です。そのため、紙媒体の教科書やプリントの課題を郵送するか、保護者に学校に来てもらい渡すのかなど、いつどこでどのような方法で児童生徒の手元にあるようにするのかなどを決めて、連絡しなければなりません。学校ごとに各家庭にメールを配信するシステムは導入していますが、教育委員会が方針を決定し、各学校に連絡し、その後保護者に連絡、というフローとなっていますので、タイムラグや学校での解釈の違いなども発生する可能性があります。また、休業期間については市内の45の小学校、19の中学校で統一された対応となっていましたが、休業期間中に児童生徒が取り組む課題の進捗状況に関するフォローなどについては、学校ごとに対応が分かれるなどの課題もありました。現在1人1台のPC端末を整備する文部科学省のGIGAスクール構想がコロナの影響により前倒しされ、全国的にタブレット端末の導入が進みつつあります。枚方市も今年度中に、小学1年生から中学3年生まですべての児童生徒に対して、タブレット端末の導入が予定されております。

私立幼稚園、保育所、子ども発達支援センター(就学前の障害児や発達上支援の必要な子どもが通う施設)についても、その都度休園・休所する期間になったり、開園・開所はしていても家庭での保育に協力するだけの期間になったりするなど、状況がたびたび変わりました。また、表現も伝わりにくい形になっていたと感じます。例えば、保育所に子どもを預けるのは、親が働いていて家庭での保育が困難だからです。そのため、枚方市保育所では3月2日から4月6日までと、5月23日から6月30日まで、「家庭での保育を要請」しましたが、「要請」されたとしても、対応が厳しい場合もあります。無理に会社を休んででも、子どもを家庭で見るべきなのかどうかは判断に悩みます。「家庭での保育を要請」は言葉通りに解釈すれば「あくまでも要請でしかない」ので、要請が出ていても保育所に預けたいという家庭の子どもは預かっていました。市民から問い合わせがあったら、そのような案内をしているということですので、その内容も市のホームページ(HP)に掲載して、できる限りHP上で完結するようにするべきであったと思います。

「中」へつづく


プロフィール
木村 亮太(きむら・りょうた)
大阪府枚方市議会議員
1984年大阪府枚方市生まれ、大阪大学経済学部を卒業し、ベンチャー企業に入社。2011年枚方市議会議員選挙に立候補しトップ当選。現在に至る。
2015年グロービス経営大学院 修了(経営学修士:MBA)
2018年京都大学大学院 公共政策教育部 公共政策専攻 修了(公共政策修士)
未来に責任を持った政治を掲げ、EBPM(証拠に基づく政策立案)、行財政改革、人事給与制度改革、教育子育ての充実、持続可能な社会保障制度の構築のために予防医療・介護予防、また、ICTを活用したまちづくりを提言している。

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