制度の課題への展望〜国民一人一人が選択できる制度に
最後は、制度の課題への展望についてです。介護保険制度が導入された際の大きな変化は、「措置から契約へ」という点でした。高齢者福祉を行政が主導する措置の非効率を解消することや、利用者自身の選択肢を増やすためにも、介護保険制度を民間事業者に開放したという点では非常に画期的でした。
しかし、自由な契約は利用者とサービス事業者双方に適切な情報が共有されていることが前提となりますが、実際は介護支援専門員に多くの情報が集中し、情報の非対称性の中で、利用者自身もその家族も適切なサービス選択が困難な現状があります。
もちろん、形式上は全ての介護サービス事業所の情報はインターネット上に公開されていますが、利用のしやすさや内容面において利用者やその家族が、適切な判断をできるまでには至っていません。
市場原理の中で、利用者が質の低い介護支援専門員や介護サービス事業者を淘汰できるように、自治体は啓発を行い、地域の介護等に係る社会関係資本の分かりやすい見える化を推進していくべきであると考えます。
また、国民一人一人も早い段階から介護について自分ごととして捉え、自ら勉強し、情報を得にいくという主体的な姿勢を持つべきであるとも考えます。
(4)最後に
介護保険制度が施行され20年が経ち、介護支援専門員の在り方も大きな転換期を迎えています。実際、「ケアマネ不要論」が国の審議会で取り上げられることもあります。
一般社団法人日本介護支援専門員協会の「介護支援専門員 倫理綱領」では、①自立支援②利用者の権利擁護③専門的知識と技術の向上④公正・中立な立場の堅持⑤社会的信頼の確立⑥秘密保持、⑦法令遵守⑧説明責任⑨苦情への対応⑩ほかの専門職との連携⑪地域包括ケアの推進⑫より良い社会づくりへの貢献──がうたわれています。
この高邁な理念を実現するためにも、国や地方自治体は法律・制度面から環境整備を推進し、また介護支援専門員は内発的な不断の改善に取り組んで行くことが求められていると考えます。