「生活に直結」。市町村議会議員を語る上でのキーワードですね。ところで、このような状況で議会のBCPですとか議会そのものの動きの対応はどうなっているのでしょうか。

 

横浜市会のBCP<横浜市会BCP(業務継続計画)>はあるのですが、大規模災害等の緊急事態が発生した場合とか、災害対策本部が設置される災害が対象ということで、主に地震と風水害なんです。

今後は今回の感染症の経験を踏まえ、BCPの作り直しをしなければいけないと考えます。そのため、最悪の事態を想定しながらも、いくつかの区※で実証実験的なことをやってみようと提案しています。今はまだそれどころじゃない感じですが。いま行政の医療系や福祉系がえらいことになっています。そこの現場から夜中の12時をまたいでメールが来たりするので、職員の過労が心配です。それ以外にも危機管理室をはじめとした関係部署が多忙を極めています。

(※編集注:政令指定都市は市の中にさらに細分化された行政区が存在します。市役所のほかに区ごとに区役所が設置されています)

 

どこも自治体は大変なことになっていますね。市民に情報を伝えるということが議員の役割であるとすると、市から情報を得る必要があり、一方で職員に聞いて回っていると現場に負担をかけてしまう。そこのバランスはどうしていますか?

 

震災の時も、1週間2週間は政治家が現地に入らない方がいいというのが良くありますけど市会も現場に負荷をかけないよう対応しています。私も例えば、直接の現場には聞かないようにしています。関係部署や人づてに対策会議などで得た情報を教えてもらうようにしています。

 

そうした状況で、議員個人として活動をしたり発信したりすることは悩ましいですね。何が正解というのもないでしょうし、ちょっとしたことで批判を浴びるリスクもある。

 

さっきも言いましたが、危機管理こそリーダシップの本質。ここでこそ試されると思います。動くしかない。時には役所に行って写真撮って発信することもありますし、外出を減らせと言う側が外出して人と接するようなことをしなければならないこともある。テイクアウトマップも、テイクアウトって家の外に出て買うことなので、見方によっては政治側が外出を促す取り組みをしていると見られかねないと思っています。

とはいえ外出自体は禁じられるものではないので、一定の批判は想定しても、いま誰が動くべきかと言うと我々が動くべきでしょう。国会でも給与削減の話が出ましたが、我々は4年間の契約社員みたいなもので、4年間は安定して仕事をいただけるわけなので、明日仕事がどうなるかわからない、雇用を続けられるかわからない、子供の学費を払い続けられるかわからない、そういう人たちがいっぱいいる中で、我々が動かないとどうするんだと思っています。

 

今回の藤崎さんの活動は、かながわオープンデータ推進地方議員研究会の会長である鈴木太郎横浜市会議員の発信で知りました。投稿の中で氏は同様の取り組みを手掛けたい議員さんを広く募っておられました。このテイクアウトマップは研究会の中でどういう扱われたのでしょう。

 

本研究会は鈴木太郎会長を中心に活動を行っており、私は副会長を務めさせていただいています。これまでも横浜市のオープンデータの取り組みを神奈川に広げようということで進めてきました。テイクアウトマップを横浜市に提案した際にも、これをオープンデータ化すれば、横浜でやるものと、例えば他市である世田谷区や町田市や千葉市などでやっているものが、「テイクアウト〇〇」という形で統合できるだろうなと考えていました。

それは、横浜のシビックテックは、トップダウンではなく議会側からの提案だったり、NPOや団体や企業との推進であったりとボトムアップ型の共創による施策展開を進めてきた経緯があるからです。そういう意味では色んなプレイヤーを巻き込んでやっていかねばならないと思っています。

今の状況下で議員としてやれることをやっていきたいなと思っています。国からの助成を待って、国からお金が来るまではなにもできないというのではなく、市政レベルでできることを議会側から、特にシビックテックという形でやってきたので・・・そういうことがこの研究会でできないかと鈴木会長に相談しました。

共創推進イベントにて。左が鈴木会長、右は同研究会の安西議員。

 

シビックテックという考え方が原点になったということですね。

 

そうですね。今は外出しづらいからみんなオンライン化している。物理的に物を作ることが難しい中オンライン上で完結させられるというのはICTの強みで、それをやれるのがシビックテック。横浜のこれまでの蓄積を活かせる一つの発露だったと言えばわかりやすいでしょうか。

 

相模原市の大八木議員も研究会の中でテイクアウトマップを始められたと聞きました。

 

研究会のFacebookページで情報を共有したところ、大八木議員から声掛けがありました。最初はグループで実施方法などの情報を共有させてもらいまして、議員連盟の役員向けに、テイクアウトあざみ野をどうやって作るかというオンライン講座を実施したりもしています。そうして役員を中心に各地の議員に広く門戸を広げているところです。

 

ありがとうございました。これからも藤崎議員のシビックテックの展開を注目しています。

ありがとうございます。

 


今回の取材を通して、テイクアウトマップを相模原市で始めた大八木議員と、研究会会長の鈴木議員にコメントをいただきました。

 

大八木聡議員(相模原市議会議員)(かながわオープンデータ推進地方議員研究会)

掲載店舗から感謝の言葉をいただけたことは勿論、店舗情報の収集に関して、フリーペーパーの発行を通じて日頃から地域活性化のために活動している同世代の仲間と取り組めたことも、大きな成果だと感じています。大好きな自分の住むまちの元気を守っていくことは「他人事」ではなく「我が事」だと思ってくださる方々との交流が深まりました。行政が行う各種施策が重要であることはいうまでもありませんが、こうした「一人ひとりの取り組み」の大切さも、改めて実感しています。

テイクアウト相模原緑区:https://sites.google.com/view/ganbaroumidoriku2020/

 

鈴木太郎議員(横浜市会議員)(かながわオープンデータ推進地方議員研究会会長)

藤崎議員が先行して自身の地元で制作したテイクアウト・サイトのテンプレートを無償提供し、各地域で簡便に同様のサイトを作れるようにしたことは超党派の地方議員組織らしい取り組みだと感じています。我々は政治家ですから必要な政策を実現してくいくことが本旨ですが、同時に自らもプレイヤーとして地域課題解決に取り組んで行けたらと思います。そういう意味では、今後もテクノロジーやデータを活用して、できるだけ簡便に社会に役立てていけるよう力を合わせていきたいと考えています。


プロフィール
藤崎浩太郎(ふじさき・こうたろう)横浜市会議員
昭和54年福島県生まれ、あざみ野在住。立命館大学大学院政策科学研究科博士課程前期課程修了。平成17年に衆議院議員江田憲司秘書となり平成21年に公設第一秘書に。平成23年4月から横浜市会議員として活動、現在3期目。

 

 

 

 

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