地方議員や自治体に期待していること
就職氷河期が再来するのかを論じてきました。本稿を読んでくださっている方は地方議員や自治体関係者が多いと思います。最後に、そうした方々に是非取り組んでいただきたい事柄についてまとめます。
1.地域特性に応じたWITHコロナ、アフターコロナの景気対策
コロナショックは、中小企業・小規模事業者、生活・サービス産業といった地域経済圏で事業を営む方々、従業員、生活者に大きなダメージを与えています。すでに国会では飲食、観光、イベント業などに対する収束後の経済対策として、約1兆7千億円の「Go to キャンペーン事業」を予算措置しています。
雇用不安を取り除くのに重要なのは、やはり景気対策です。国の施策展開はもちろん重要ですが、地域特性に合わせた経済対策を今のうちに、自治体や地域ごとに検討しておくことが必要です。
現在、売上が激減した事業者に対する独自支援策や、特別定額給付金の対応などで自治体も多忙を極めているはずです。収束後の対策まで手も頭も回りきらないと思いますが、このような時こそ、地方自治における二元代表の一翼を担う地方議員の皆様が、求められる施策を調査していくことを期待したいです。
2.雇用労働対策の大胆なアップデート
自治体が行う就職イベントなどの雇用労働対策もアップデートの必要があります。
すでに多くの自治体では、主催する求職者向けセミナーや合同企業説明会などをオンライン化しています。新たなテクノロジーを活用して、新たな労働施策を展開している事例も見られます。神戸市では、SNSを通して得られたカウンセリングデータや求職者の希望等のデータおよび就職先候補企業の要望について、AI技術等を用いて解析することで高い精度のマッチングを実現する取り組みを6月から始めようとしています。同時に、労働者に求められるスキルも近年大きく変容しています。残念ながら時代遅れの職業訓練事業では企業や地域に付加価値を提供できず、就労の機会も限られたものになってきます。
自治体が行う雇用労働政策として、生活困窮者支援や障害者支援など福祉的観点からも検討しなければなりませんが、いずれにせよ、コロナ後に大きく変わっていく求められるスキルの変化に対応して、就労支援、職業能力開発に関する事務事業の見直しを期待したいです。
3.New Normal の働き方推進
リモートワークはコロナ前から推進されてきましたが、業務の継続性の観点からここにきて一気に進んでいます。ホワイトカラー職にあっては、成果やプロセスをマネジメントできさえすれば、必ずしも働く場所や働く時間、多くの人がもがき苦しんできた「正規」と「非正規」という雇用形態の壁に囚われる必要がないことも露わになっています。昨今、フリーランスや副業・兼業の問題に関して議論されてきたことが一夜にしてまとまったことには驚きました。
就業時間や場所も含めて、これまでの固定概念が、恒常的なリモートワークというNew Normalの登場により、形骸化、無意味化していく中で企業にも行政にも変革が求められます。すなわち、リモートワークを前提とした業務プロセスに加え、就業規則や人事・勤労管理ルールの検証・整備といった対応です。
議員の皆様や自治体の方々には、激変する働き方に適応するために、事業者や労働者に働きかけるとともに、行政組織も率先して取り組むように促して頂くことを期待したいです。そうすることが、経済活動の継続性をもたらし、ひいては採用活動の安定化をもたらすと考えています。
プロフィール
藤井哲也(ふじい・てつや)
1978年生まれ。株式会社パブリックX代表取締役。しがジョブパーク就職氷河期世代担当。京都大学公共政策大学院修了。就労支援会社の経営、大津市議会議員、政策ロビイング活動などを経て2020年4月から現職。雇用問題、人事労務に関する著書・寄稿多数。