新型コロナ禍のひとり親家庭への支援(2)

新型コロナ禍のひとり親家庭への支援
困窮にも行政の対応不十分

千葉市議会議員
田畑 直子

2020/8/12 新型コロナ禍のひとり親家庭への支援(1)
2020/8/14 新型コロナ禍のひとり親家庭への支援(2)
2020/8/17 新型コロナ禍のひとり親家庭への支援(3)
2020/8/19 新型コロナ禍のひとり親家庭への支援(4)
2020/8/21 新型コロナ禍のひとり親家庭への支援(5)


アンケート調査から見えた現状

まず初めにひとり親のリアルな声を集めるため、インターネットアンケートを実施した。2020年5月4日から9日までインターネットで、全国のひとり親を対象にアンケートを募り、6日間で31都道府県から241人の回答を得た。

アンケート結果まとめ
自由記述には、切実な意見が多く寄せられた。最も多かったのは、休業要請や、学校の休校等に伴い、就労状況の変更を余儀なくされ、さらに、元配偶者の収入減少に伴う養育費の不払いなどで、収入が減少したことや、学校休校により、子どもの在宅時間が長くなり、昼食費や光熱費、マスクなど日用品費等の家計費が増加したことであった。

子どもに関することも多く、生活習慣の維持が困難なことや、心身の影響への不安、家庭にオンライン学習の環境がないこと、保護者が面倒を見られないことによる学習の遅れや進学への不安が寄せられた。さらに、子どもが高校生や大学生の家庭でも、子どものアルバイト収入がなくなったことや、今後の学費確保への不安の声があり、児童手当の対象外となる15歳以上の子どもがいる家庭にも支援が欲しい、との意見があった。

また、感染が怖いが、生活のために働かなければならないという葛藤や、保護者が感染した場合の子どもの養育先がない、保護者の心身に既に不調の影響が出ている、仕事を見つけなければならないなど、日々の不安に駆られる一方で、将来や、今後の収入など、先行きの見えない不安を訴える人も見られた。

行政の支援への不満と期待も大きく、地域や行政サービスとのつながりを絶たれた家庭の中で、孤立感が高まっている実態があった。

オンライン座談会の実施

アンケート結果を踏まえ、当事者へ直接ヒアリングを行うことで問題をより深く理解し、政策提言へ繋げることを目的としてオンライン座談会を実施した。

アンケート回答者241人から募ったところ、今回の参加希望者は38人、今後参加したいと表明された方が96人と多くの方から参加の意思があった。今回は、2回に分け実施、計17人の参加があった。千葉県・東京都・神奈川県・愛知県・滋賀県・三重県の1都5県から、20〜50代の幅広い年代の方に参加いただいた。子どもの年齢別や悩みの近い人でグループをつくり、意見交換を行い、児童扶養手当制度の課題、経済支援の必要性、住宅の確保支援の充実、仕事・働き方の悩み、緊急時の子どもの預かり先、大学生・専門学校生を抱える世帯への支援の必要性、学校休校による子どもへの心身や学習面での影響、行政支援制度の周知方法の改善、当事者が意見交換できる場の必要性について話し合った。座談会によって、私たちが実態をより理解できただけではなく、参加者にとっても、「当事者議員がいることを知り、心強かった」「忘れられていると感じていたが、ひとり親家庭に注目してくれて、安堵した」など、悩みや、行政への意見を議員に直接伝えたことが安心感につながり、さらに、「ひとり親がこんなにいることが分かり、よかった」など参加者同士が知り合い、悩みを共有し、共感し合ったことで、孤独感が和らいだという感想が寄せられ、開催の意義を感じた。今後も継続する予定だ。

二つの調査を通して

この二つの調査を通して、ひとり親当事者がコロナ禍に置かれた状況や心情を理解、課題を抽出し、政策提言にまとめることとした。

筆者の感想は、子育てに関する悩みが予想以上に多く寄せられたということだ。

休業要請による影響等で非正規雇用が多いひとり親家庭が経済的な打撃を受けることは、容易に想像でき、実際に多くの家庭で収入減が見られたが、学校休校、保育所の利用自粛等による影響で、行政サービスが得られず、仕事との両立がさらに困難になっただけではなく、外出自粛という生活の制限による閉塞感のある中で、子育ての代わりもおらず、負担が増加している影響について、世論でも注目されておらず、国・自治体においても、意識が届いていない。

さらに子ども自身への心身面、学習面の影響も懸念される。経済的な困窮は解決策が明確なのに対し、子育てにおける保護者と子どもの心身の影響は、現状の大変さを直ぐに取り除く対応が必要であるとともに、影響が長引いた場合には、継続的な支援が必要になる。このような課題と支援の必要性について、取り上げなければならないと強く感じた。

また、活動を通じて、「私たちひとり親は、決して独りじゃない」ということを、座談会参加者や議員間で実感できた。次回からは、具体的な提言と、今後の展望について述べる。

第3回につづく


プロフィール
田畑 直子(たばた・なおこ)
千葉県千葉市議会議員
1976年生まれ。1児の母。東京女子大文理学部日本文学科中退。シングルマザーとなり、財団法人等の非常勤職員として勤務、学校のPTA役員や青少年育成活動に従事。政党の公募により公認され、2011年に初当選。現在3期。子育てをはじめ、多様な女性の生き方への支援充実を掲げる。全国若手市議会議員の会役員、国民民主党全国青年委員会役員、若手女性地方議員ネットワークWOMAN SHIFT運営部。ひとり親家庭支援のための地方議員ネットワーク発起人。

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