株式会社パブリックX代表取締役
しがジョブパーク就職氷河期世代担当
藤井 哲也
新型コロナウィルス感染症の拡大防止のため、外出や営業活動の自粛が続けられてきました。筆者が住む京都でも4月下旬に京都商工会議所の前会頭・立石義雄氏がコロナで亡くなられ一気に緊張が広がりました。 4月の観光業や飲食業、イベント事業者などの景気動向指数は過去最低の数字となり、採用活動の一時中止や失業率の高まりの兆しが見られるなど、予断を許さない状況です。予防薬やワクチン開発がなされるまでは「WITHコロナ」の状態が続くと考えられます。
こうした中で、再び就職氷河期が到来するという悲観的な見方も出ています。果たして就職氷河期は到来するのか。このような時、地方議員や自治体レベルでできることはどのようなことでしょうか。
説明会、面接、インターンのオンライン化…激変する雇用環境!
新型コロナの感染拡大によって働き方が激変しています。社員の在宅勤務の対策をいち早くとったGMOインターネットグループは、コロナ収束後も在宅勤務を継続する方針で、週に何度か出社して業務マネジメントとエンゲージメント維持に取り組むということが報じられています。ハンコを押すためだけに出社せねばならないことが社会問題になっていますが、大半の仕事が、実は在宅でできることが白日の下に晒されました。
就職活動も変化の渦中にあります。会社説明会、面接、そしてインターンシップもオンライン化が劇的に進んでいます。筆者が運営に関わる自治体の就業支援施設でも、求職者からのキャリアカウンセリングはZoomで行うことが当たり前になっています。緊急事態宣言が解除されてからも、就職活動のオンライン化の流れはおそらく止まらないでしょう。
就職氷河期を生み出した原因を振り返る
そんな激変する雇用環境の中で、懸念される就職氷河期は訪れるのでしょうか。その可能性を検討するために、就職氷河期世代が生まれた原因・背景を振り返ります。
原因1 20歳代のキャリア基盤形成期に就労環境が悪い状態が続く
就職氷河期世代が形成されたのは、社会に出たタイミングで就職環境が悪かった、というだけではなく、多くの人のキャリア基盤を築く20歳代半ばまでの大切な時期を通じて雇用環境が悪かったことが大きな要因です。リーマンショック後も雇用環境は悪かったのですが、数年間で景気回復し、当時の若者はキャリア形成の遅れをなんとか挽回することができました。
原因2 非正規労働者に成長機会が与えられなかった
非正規労働者は一般的に定型的な仕事を与えられることが多く、新たな価値を創造する仕事、マネジメントに関する仕事は正社員が担ってきました。正社員と非正社員の間に所得格差が生じるのは、正社員が役職に就く30代になってからです。役職や担当する職務が上がるに連れて正社員の給与は上がり、また成長機会も得られます。片や非正規社員は一向に給与は上がらず、与えられる仕事も変わらないため成長機会に乏しいまま時間が過ぎ去ります。
就職氷河期世代の支援対象者は約100万人と政府は推計しています。不本意に非正規社員を続けてきた方は、なかなか正社員になることができずに来ました。2010年代後半に景気回復し、新卒採用では飲食接待によるリクルーティング活動も復活するなど、近年稀に見る労働力の買い手市場化が進み、非正規社員の待遇改善・正規転換も一定なされました。しかし、その実態は、非正規社員並みの処遇でありながら、雇用形態は正社員という“なんちゃって正社員”も数多く見られます。
原因3 非正規や無業状態だった方への職業訓練が効果的ではなかった
当時の政府も無策だったわけではなく、雇用環境が悪化し新卒非正規が増え始めた2003年には早くも「若者自立挑戦プラン」を策定し、全国に若年者就業支援拠点「ジョブカフェ」を設置しました。リーマンショック後には給付金付き職業訓練事業や、雇用調整助成金制度を創設するなどしてきました。
しかし、民間委託で行われてきた職業訓練は、基礎的なOAスキルや、初歩的な介護福祉、WEBデザインなどに関する知識を学ぶものばかりでした。実は筆者も民間委託された職業訓練事業を1事業者として担っていたこともありましたが、社会に出て求められるスキルや労働意欲の水準と、現場で行っている職業訓練内容とのギャップに苦悩していました。