市民に「責任」「自立」を促すリーダーシップ~片岡聡一・岡山県総社市長インタビュー(2)~

岡山県総社市長 片岡聡一
(聞き手)一般社団法人 官民共創未来コンソーシアム 代表理事 小田理恵子

 

2023/06/27 市民に「責任」「自立」を促すリーダーシップ~片岡聡一・岡山県総社市長インタビュー(1)~
2023/06/29 市民に「責任」「自立」を促すリーダーシップ~片岡聡一・岡山県総社市長インタビュー(2)~
2023/07/03 何よりも「人の幸せ」を最優先に~片岡聡一・岡山県総社市長インタビュー(3)~
2023/07/05 何よりも「人の幸せ」を最優先に~片岡聡一・岡山県総社市長インタビュー(4)~

 

まちの持続性を高める

小田 リーダーシップと自立の促進は、バランスを取るのが難しいのではないでしょうか。トップが強いリーダーシップを発揮すれば人はついてきますが、トップに任せ切りという傾向が強くなります。一方で人々の自立を促すためには、ある程度の方向性を示さないと分裂が起こります。どのようにバランスを取っているのですか?

片岡市長 政策を考えて「こういうことをやる」と宣言するのは、私の仕事です。これは、いわゆる「旗を立てるリーダーシップ」です。一方で、政策を実行する際に必要なのは「調整のリーダーシップ」です。特に何か仕組みを大きく変えようとするときは、利害関係者や既存の施設などとの交渉が必須となります。こうした要所では私が出て行きますが、その他の具体的な業務の部分では口を挟みません。職員に任せています。

 

小田 市民の自立については、いかがですか?

片岡市長 自治体と市民の共存共栄が、まちの持続性を高めることにつながると伝えています。「私たちも頑張るから、皆さんも頑張りましょう」というスタンスです。各地域には「地域づくり自由枠交付金制度」で裁量権を移譲しましたが、最初から全地域がうまく自立したわけではありませんでした。しかし、それも織り込み済みです。皆で自立の過程を経験し、学びを得て、時には失敗もしながら進んでいくのです。

 

高倍率の職員採用試験

小田 庁内での人材育成や組織づくりについて伺います。ナンバー2である副市長の人事はどうされているのですか?

片岡市長 私は市長就任前、橋本龍太郎元首相(注=06年に死去。衆院議員時代は岡山県を地盤としていた)の秘書を務めており、市役所での勤務経験はありませんでした。そこで、まずは秘書時代の人脈から適任者を紹介してもらい、副市長になっていただきました。現在は、市職員を務めてきた方が副市長を担っています。

 

小田 人事評価制度の導入後、職員の働くモチベーションに変化はありましたか?

片岡市長 やる気がある職員はもちろんいます。一方でキャリアアップに興味の薄い職員も一定数います。欲を言えば、職員にはもう少し積極性を表に出してほしいですね。皆、人が良いので控えめです。

 

小田 しかし、キャリアアップの評価基準が明確であることは強みだと思います。職員採用試験に挑む方は増えたのではないでしょうか?

片岡市長 採用倍率は高いと思います。18年7月の西日本豪雨災害のときに、私の采配がメディアで取り上げられたことがありました。その直後の採用倍率は46.7倍でした。現在は落ち着きましたが、いまだに20倍ほどあります。

 

小田 46.7倍ですか! 見たことのない数値です。私は当時、川崎市議でしたが、その頃の採用倍率は3.3倍でした。きっと豪雨災害時の報道を見て、片岡市長の下で働きたいと思った人が応募したのでしょうね。

片岡市長 当時、私は災害対策本部の中で、あえて声を荒らげることもありました。混乱が続く中で指揮命令系統を整えるためです。その様子がメディアで報道されましたから、「迅速な対応」と評価される一方で「暴君市長」と呼ばれたりもしました。採用試験に応募してきた方がどんな情報を目にしたかは分かりませんが、市の災害対策への姿勢に少なからず共感いただけた結果ではないかと思っています。

 

小田 市民に寄り添うことを最優先にする姿勢が、多くの人に伝わったのだと思います。

総社市はかねて、災害に際して「プッシュ型支援」を行う自治体として知られています。そして片岡市長は、橋本元首相の秘書時代に阪神大震災の現場対応に携わった経験から、災害対策のエキスパートでもあります。次回は総社市の災害対策などについて、詳しく伺います。

 

第3回に続く

※本記事の出典:時事通信社「地方行政」2023年5月15日号

 


【プロフィール】

岡山県総社市長・片岡 聡一(かたおか そういち)

1959年、岡山県総社市生まれ。青山学院大法卒。84年橋本龍太郎事務所に入り、首相公設第一秘書、行政改革・沖縄北方担当相秘書官を務める。2007年総社市長に就任し、現在4期目。

 

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