行政も政治も知る市長が実践する、信頼から始まる組織マネジメント~川田翔子・京都府八幡市長インタビュー(1)~

京都府八幡市長 川田翔子
(聞き手)一般社団法人 官民共創未来コンソーシアム 代表理事 小田理恵子

 

2026/06/30 行政も政治も知る市長が実践する、信頼から始まる組織マネジメント~川田翔子・京都府八幡市長インタビュー(1)~

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2026/07/07 「生活都市」から、「多機能都市」へ~川田翔子・京都府八幡市長インタビュー(3)~

2026/07/09 「生活都市」から、「多機能都市」へ~川田翔子・京都府八幡市長インタビュー(3)~

 


 

京都府八幡市。人口約6万8000人のこの自治体は、高度経済成長期に急速な宅地造成で発展したベッドタウンとして栄えてきた一方、現在は人口減少と高齢化という構造的な課題に真正面から向き合っています。

そんな中、2023年11月に全国の女性市長として史上最年少となる33歳で就任したのが川田翔子市長です。川田市長は、京都市役所のケースワーカー、そして国会議員秘書を歴任し、行政と政治の両面に精通したキャリアを有しています。

そんな若きリーダーは、就任直後にどう組織と向き合い、いかにして市政を動かし始めたのでしょうか。

前編では、就任初期の組織マネジメントや、霞が関・永田町とのネットワーク活用、そして「提案が上がってくる組織」をどうつくってきたかについて、詳しく伺いました。(聞き手=一般社団法人官民共創未来コンソーシアム代表理事・小田理恵子)

 

京都府八幡市_川田市長_インタビュー風景 京都府八幡市_川田市長_インタビュー風景

川田市長(上)へのインタビューはオンラインで行われた(出典:官民共創未来コンソーシアム)

 

就任直後からキャリアの下地を生かす

小田 近年は、役所外の方が首長に就任するケースが増えてきていますが、最初の組織づくりに苦戦する話もよく耳にします。八幡市職員の皆さんにとって、川田市長も就任直後はいわゆる「外から来た若いリーダー」でした。そんな中、まずどのようなことから着手されたのでしょうか。

川田市長 八幡市役所は私にとって初めての場でしたが、ある程度キャリアの下地がある状態で臨めたことは、大きな助けになりました。私は京都市役所で行政職員として7年間働いた経験があったので、専門用語や行政の仕事の進め方は、一通り頭に入っていました。

さらに、政治家秘書として東京で働いた経験もあったため、行政と政治、両方のありのままの姿を知っていたことは大きかったですね。

また、選挙活動の中で八幡市内を徹底的に走り回ったことで、土地勘もできていました。どこに何があり、誰がどこに住んでいるか。その土地勘と行政の知識を組み合わせながら、就任直後から部長・課長級の皆さんとのコミュニケーションをかなり積極的に取るようにしました。

すると、コミュニケーションのキャッチボールが徐々に成り立つようになりました。最初の入り方として、これは大事だったと思っています。

 

小田 就任直後のスピード感もすごいですよね。11月から早速、上下水道基本料金の2カ月分の減免や、低所得世帯への追加支援給付金など、経済対策をすぐに進められました。これだけ素早く動けたのは、どういった判断からだったのでしょうか。

川田市長 市民の皆さんの生活を下支えすることが、最初にできることだと判断しました。一方で組織の内側については、やはりじっくり時間をかけて見ていく必要があると思っていました。外から来た者として、いきなり大きな変化を起こすのではなく、まずは信頼関係を丁寧につくっていくことが先だと感じていました。

 

小田 最初から行政と政治の両方に携わってこられたのは、かなり特殊なキャリアですよね。市長になる前に、「こうした背景があると役に立つ」という観点で、首長を目指す方にはどのような経験が有効だと思われますか。

川田市長 その地域だけでなく、あえて他の地域での活動経験があると、市長になってから全く違う動きができると思います。私の場合は、霞が関や永田町での仕事経験や、その時にできたつながりが生きたように思います。

 

地道に信頼を蓄積するための「観察」

小田 前回インタビューした大阪府箕面市の原田亮市長は、全職員へのアンケートを実施して組織の実態把握をしたそうです。川田市長は、就任直後に何らかの形で組織の声を聴くことはしましたか?

川田市長 私の場合、職員の皆さんが身構えてしまうかなと思いまして、一斉アンケートはしませんでした。その代わり、普段の協議の中で、部長や課長の皆さんの些細な言動を注意深く見るようにしました。

例えば、「この人は内心では賛成していないのではないか?」とか、「この人とこの人の関係性はどうなのか?」などです。そういうところを丁寧に見ていきながら、話題を振って意見を拾うようにしました。そんな形で状況を把握していきました。

 

小田 それは市長がかつて京都市役所でケースワーカーを務めていたことや、議員秘書をされていたことで培われた「機微を汲み取る」という力が生きたのでしょうか?

川田市長 議員秘書の経験で培った機微の方は、どちらかというと議会対応に使っている感覚です。職員の皆さんには、行政職員だった頃の経験を中心にコミュニケーションを取らせていただいています。

若手がいきなり自治体のトップになる場合、「外から来た訳の分からない人」の方が真っさらな状態からコミュニケーションができると思います。内部から昇格して首長になると、かつての先輩がある日突然部下になるという難しさがあります。私は最初から真っさらな状態で関係性をつくれたので、そこは良かったと思っています。

一方で、就任以降は23年度から継続的に「組織診断サーベイ」を実施しています。組織のモチベーションや職場環境を客観的なデータで把握し続けることで、感覚だけに頼らない組織づくりを意識しています。

 

郊外都市が抱える課題

小田 永田町や霞が関でのご経験やつながりも、川田市長の強みだと思います。市長になってからどのように生かされていますか?

川田市長 議員秘書の経験があることで、要望書の適切な届け方やタイミングが分かります。市長になってからは、何人もの国会議員の方と直接お会いし、話ができています。

 

小田 それは大きな強みですね。具体的に、どんな課題を訴えているのでしょうか。

川田市長 特に声を上げているのが、郊外都市(注)の課題が国の政策から抜け落ちているということです。国が「地方」というと、どうしても過疎地域の話になりがちで、三大都市圏の周辺にある郊外都市には焦点が当たっていません。

国会議員の方々も地方の課題に寄り添いたいとは思っていても、やはり東京にいる時間が長いと、課題の解像度がどうしても低くなってしまいます。

過疎地域に限らず郊外都市でも、公共交通の縮退や人口減少の問題はどんどん深刻になりつつあります。これらは、国全体として対策していかなければならないと考えています。現場の生の情報を、いかに制度設計をする人たちへ届けるか、市長として重要な仕事だと思っています。

(注)ここでは、高度経済成長期に宅地造成や団地の建設等で急激に人口が増加し、現在は急激な人口減少が起きている都市部周辺のベッドタウンなどを指す

 

(第2回に続く)

※本記事の出典:時事通信社「地方行政」2026年5月18日号

 


【プロフィール】

川田 翔子(かわた・しょうこ)

奈良県出身。京都大経済学部経済経営学科卒業。
2015年京都市役所に入庁。生活保護ケースワーカーや学校跡地を活用した官民連携事業を担当。
22年に退職し、参議院議員の私設秘書に。23年11月、八幡市長選挙に立候補し、女性最年少(当時33歳)で初当選。市長に就任。

 

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