ワークショップの最後には、参加者で議論しながら、未来の鹿沼公園、こんなことができたら素敵だよねっていうイラストも描いていましたね。

ワークショップ自体、何かを解決する場にしようとは思っていなかったと申し上げたのと同じで、あの絵自体をすぐにどうこうするつもりはないんです。それよりも、あのワークショップを皮切りにずーっと市民が何か行動している状況をを作ろうと思いました。いい意味で公園を使い倒すというか、あの絵の中に、「こんなことができたら、私は幸せ」っていう市民の思いが反映されていると思うので、そういうのを一つひとつ、公園で実践したいなぁって考えています。不思議なことに、私たちが動きだして、地域の方々が公園を使ったイベントも増えたんですよ。

201712月に実施した第1回目のワークショップを皮切りに、その後、「myチェアを作るワークショップ」、「myライトを作るワークショップ」、「ナイトシアター」「防災キャンプワークショップ」とイベントを続けてきました。こうしたコンテンツはどのように企画されているのですか?

専門家チームが主導する形で、ワークショップを企画しています。企画を作る際に活きているのは、最初のワークショップで行なった公園利用者アンケートです。あの時、「鹿沼公園に課題はありますか?」って聞いているのですが、ほとんどのアンケートは「特にない」って回答でした。でも、その中に「座るところがもう少しほしい」とか、「夜が暗い」とかあったんです。私たちは、ここに注目しました。そういえば、アンケートに「座る場所がない」とか「夜が暗い」とか、そういう声があったよねって。

おー、それはさっきおっしゃっていて「世の中の当たり前に隠れてしまった、見えない部分にある本質を大事にする」に通底しますね。行政や議会だと「アンケートの回答のうち、困っていることが「ない」がほとんどだったら、それが市民の声」って判断しますよね、一般的には。でも、五十嵐さんのチームはそうじゃなかった。

それはさっき、言ったように、隠れているところに本質があると思っているので。それと1回目のワークショップをやったときに、公園を利用している方々と世間話のようなお話しながら意見を聞いているので、結構深く聞けていたと思います。

でもベンチだと簡単に公園に設置できないですよね。行政もできない理由を言っちゃうし。みんなで考えている中で、ふと、思ったんです。「あ!恒常的に設置することにならない、myチェアならやれるね」って。

それに、myチェアを作ったり、それを公園に持ち込んで思い思いの場所に座ったりというのが、鹿沼公園の風景になっていくとおもしろいなって思ったんです。

2回目以降のワークショップ、myチェア、myライトはどんなイベントだったんですか?

チェアは参加費300円で自分たちで木製の椅子を作るというイベントです。公園でチェアを作るって、単純に楽しいじゃないですか。だから、通りかかった人が参加したり、その参加がきっかけで鹿沼公園のことを知ったり。アンケートも取りました。チェアは昼間だったから、子連れのお父さんとか、外国人の親子とか、そのうち、チェアに座っておじさんが楽器の演奏を始めたり、大学生が合わせて歌いだしたり。色んなことがありました。

その通りすがりでワークショップに参加した人たちは、その後の鹿沼公園をめぐるアクションに何か関わりって生まれているんですか?

それはちょっと分からないです。そこは割とどちらでもいいと思っているので。確かに伊藤さんが言いたいことは分かります。何ていうんだろう、反対運動ではないけど、賛成でもなくても、もう少し私たちの声もちゃんと聞いてというアクションに対して、賛同者は一人でも多くいるといいよねっていう意味ですよね。それがちゃんと数として把握できているというか。

そこはワークショップはワークショップなんですよね、あくまでも。鹿沼公園の価値と可能性を広くみんなに再認識してもらいたいっていう。

面白いなぁ・・・・。そうしたら、myチェアとかmyライトとか、イベントを通じて市民から出てきた声はありますか?

まだ、まとめてないのですが、あります。myチェアのワークショップではお気に入りの場所に座ってもらって、その位置をマッピングしていて、「何でそこなの?」ってことも聞いています。ただ、それを資料としてはまだまとめられていません。やらないといけないのですが。まとめて、行政に渡したいですね・色んなヒントになると思うので。

myライトの時は防犯設計の話を専門家の方にしてもらった上で、ライトをもって公園を歩いてもらって、ライトを消したらどうなるか、暗くて怖いか、大丈夫か。「意外にここはライトなくても大丈夫だね」って場所もあって。そういうのも全部、マッピングしてあります。

ランドスケープアーキテクトの人は植栽の専門家でもあるので、そういう人の話も聞いたり。市民は「せっかく育ってきた植栽を切るなんて行政は緑の重要性をわかっていない!」といい、行政は行政で専門の立場から何をしなくちゃいけないかは分かっているけど、説明が上手じゃないというか、市民には「とにかく切ります」という風に聞こえてしまう。でも、こういうワークショップを通じて、市民と行政、間に入る専門家チームの、ゆるやかなコミュニケーションがあったことで、「植栽はこれくらいは手入れしないとダメですよ」という専門家のアドバイスが市民にすーっと入っていく。

 

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