なるほど。そういう楽しめるワークショップは参加者の心も開いているから、普段行政が伝えたいけど、伝えられていないこともスーッと入っていくんですね。最初におっしゃっていた2つのチームを作ったところがやっぱり、ポイントですね。

そうですね。そういう動きをしている中で、20182月に議会質問をしているんですけど、その時に市長が「制度あり、スケジュールありきでは進めない」って答弁してくれたんです。この答弁は大きかったです。これを機に流れが少し変わりました。20183月に決まるはずだった計画は一旦止まって、その後事実上の白紙になりました。

まだ途中だと思いますが、今回の一連の中で、何を感じていますか?

やはり、本質をどう掴むか、だと思うんです。伊藤さんの方が専門だと思いますが、都市公園は規制緩和が近年進んでいて、Park-PFIもできました。字面だけでいうと、公園の有効活用なんだけど、ここはちゃんと考える必要があって。この規制緩和のプロセスには、量から質へ、という考え方の転換があったわけです。ちゃんと活性化している公園は何も無理をする必要ないと思うんです。実際、鹿沼公園の利用者は、人口減少が始まっているこのご時世になって、年々増えているんです。つまり、活性化している。こういう公園を無理にいじる必要はないはずで、もちろん、自治体の財政難の時代だから、収益性を出して、それで維持管理費に充てるというのはあっていいと思いますけど、発想としては活性化があって活用。

一方で、ポテンシャルはあるのに活性化していない公園もあるから、そういうところはPark-PFIで活性化して、というのはあると思います。いずれにしても、いっしょくたに「公園を活性化しよう」というのは、物事の本質が見えにくくなっちゃうし、地方自治体としては都市公園法の改正はどういう趣旨で行われたのか、その背景や法の精神みたいなところをもっとちゃんと理解しないといけないと思います。都市公園法のオピニオンリーダーである、町田さん(元国交省)の話をもうちょっとたくさんの行政職員に聞いてほしいなぁ。

鹿沼公園はどうなっていくのがいい未来だと思いますか。形というよりはプロセスとして。

市民と何かを作ろうとしたときに、今欠けているのは、市民を信じる力と多様な人の声を反映させるプロセスを信じる姿勢、じゃないかと思うんです。そこが行政は苦手なのではないかと。「最後は自分たちがやらなくちゃ」、っていう誤った責任感が、何かをやって上手くいかないという事態を恐れさせている。

でも本当はそうじゃなくって、うまくいかないというのも一つのプロセスだから、それをキチンと受け止めて、「今こうしてうまくいってないけど、どうしようか?」という投げかけをすればいいんです、本当は。でも、上手くいってないことがダメなんだという思い込みが強すぎるのが行政ではないかと。これだと、行政も本当は辛い。間違ったり、イメージしていたことと違う状況になったら、それをちゃんと認めて、そうなった要因を分析して、方向修正して未来へ向かえばいいんです。

行政の人たちの意識が変わっていくと、市民の意識も変わっていくと思います。カタチになること以上に、プロセスを経験することが大事だよねってみんなが思えると、たぶん、鹿沼公園のいい未来が訪れるでしょうね。そのプロセスを経たら、自ずといいカタチに落ち着く。

それから、異論を即反対として受け止めるのではなく、「何を言っているのだろう?」って考えると違う景色が見えてくる。必ずしも全否定じゃないんですよね。「ここはいいけどさ、何もこうすることはないでしょうよ」、っていう実は建設的な意見だったりもするわけです。よくよく耳を傾ければ。それを単に反対ってくくってしまうから、本当の思いを理解できないし、受け止められない。これは双方に問題があります。

そういうコミュニケーションのデザインって五十嵐さんじゃなくてもできる人、いるはずなんだけど、行政はなぜ、そういう人に発注しないんだろう?

まずは、そういうコミュニケーションのデザインが必要だという意識そのものが行政には希薄だと思います。そして、行政は外へのアンテナの張り方も不足している。だから議員の価値としては、そういう意識の重要性を様々な方法で行政に伝えていくことと、多様な人材と繋がって知恵を持ち込むこともすごく重要だと思います。一方で行政は行政のやノウハウがあります。とそれは民間でも必要性を認めているところだと思うんですよね。その辺がうまく融合するといいと思います。

 

インタビュアーより

五十嵐さんの話を聞いていて、一つ、大きな特徴があることが分かりました。それは目の前の「カタチ」に気を取られない、と言うこと。メタ認知が高いのかもしれません。これから企業が公共を担う時代が到来する中で、彼女のようなコミュニケーションデザインの上手な人が活躍する場面は増えていく気がします。

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