有権者に対して無下にもできませんし、どう対処してよいか一人で悩んでいる女性議員も多いのではないでしょうか。本目さんが議員活動を通じて味わったそうした苦労の数々が主宰されている「WOMAN SHIFT」の活動へと繋がったのですよね。
はい。多くの仲間が1期4年の間に、様々な経験をしたため2期目への挑戦を真剣に迷っていました。それは私も含めてです。これまで無縁とも呼べた政治の世界に飛び込んで、大きなチャレンジの道半ばにも関わらず、議員の重要な要素である政策面ではない部分で悩まされ、そもそも立候補することさえ断念することを考えるまで追い込まれている現状には強い問題意識を覚えました。
せっかく志を持って政治の世界に入ってくれた方が、ハラスメントなどの政治を取り巻く環境で政治の世界から去っていくのは残念な話です。そうした意味でWOMAN SHIFTの活動には大いに期待しています。ところで、以前からお聞きしたかったのですが、WOMAN SHIFTは45歳以下の女性議員を対象としていますよね。これは何故なのでしょうか?
なぜ年齢で区切るのか? と聞かれることもあるのですが、私の問題意識が「出産」あたりにあることも関係あるのかもしれません。同年代だからこそ通じる悩みがあって、腹を割って話しても否定されない安全な場をつくれている気もしています。活動も首都圏が中心になっていますが、私個人のリソースが限られているので、こうした形をとっている面もあります。
ある議員が「出産や子育てを経験した時代が同じことで分かち合えるものがある」とおっしゃってましたが、同年代というのはキーワードかもしれませんね。WOMAN SHIFT設立の動機の一つに、20代から40代の女性議員が圧倒的に少ないことをあげられていましたし、民間の立場からするとターゲティングは重要なので納得できます。政治の世界ではどう捉えられているのかな? と疑問に思ってたんです。
ただ、おそらく対象の年齢以外の方でもWOMAN SHIFTのような場を必要としている方もいると思いますし、年齢や地域を超えた取り組みが増えていくことが望ましいと考えていますので、そうした方々向けに「WOMAN SHIFTのつくりかた」の講座を開くなどして裾野を広げる活動を行っております。「場」をつくり、続けるには必要とする方の熱量が必要です。
願わくば、WOMAN SHIFTが全国にひろがって、孤独な女性議員が少しでも減り、最終的にはWOMAN SHIFTのような活動が必要なくなることが理想ですね。
ところで本目さんはWOMAN SHIFTのミッションとして「政策実現ができる女性議員を増やし、地方議員を女性のキャリアの選択肢の一つにすること」とおっしゃっています。キャリアの選択肢として議員を捉える考えには私も共感しています。WOMAN SHIFTの取り組みは、民間企業で人事をご経験された前職のご経験も活かされているんだろうなと感じています。
ありがとうございます。WOMAN SHIFTに関しては、若い女性議員を増やして同じ目線の議員を増やしたいという思いからだったので、前職との関連を強く意識したわけではありませんが、そうした経験は現在につながっているのかもしれません。
たしか人事だったころに、妻の出産時に夫が有給で休暇を取れる制度や自己啓発に使えるワークライフバランス手当などを構築しているんですよね。社員が仕事とプライベート・家庭を両立できる環境づくりに努める姿勢は、フィールドを変えた今でも同じに見えます。そんな本目さんが、議員を目指すきっかけどういうものだったのですか?
直接のきっかけは社会人になってから、ちょうどある雑誌社が主催していたワーク・ライフバランスに関するプレゼン講座に参加したんです。その時に「あなたは何がやりたいの?」「どんな社会を作りたいの?」と問われた時に、「性別に関わらずやりたいことにチャレンジできるダイバーシティ社会を作りたい」といったことを言いまして、その話の流れで「議員になります」って宣言するまでになっちゃったんです。
そうなんですか。ただ普通に会社勤めをしていても、地方議員という選択肢は出てこないですよね?
そうですね。そもそも政治なんて身近な存在じゃなかったですし、議員という仕事も詳しくわかりませんでした。
ただ、プレゼン講座以前にも、身近な人に私自身の問題意識を話していたら、「それって政治でできるんじゃない?」って言われて、私自身の意識と政治が結びついていくようになり、議員を志すに至りました。その後、とある政党の政治塾の門を叩いて、統一地方選挙で台東区で立候補をするという流れになりました。