温度差が生み出す対流が地域活性化を作り出す
さらに会津大学の藤井靖史さんが、独自の「味噌汁理論」も交えながら「スマートシティ会津」の取り組みを紹介されました。
藤井:今、地域でICTを活用しようとしても行政にテクノロジーを理解した人材がいません。一方で、全国的に珍しいのですが、会津若松市にはテクノロジーを使いこなす行政職員が多い。1,300人のエンジニアの原石を抱える会津大学もあるので、地域全体にテクノロジーの裾野が広がっている特徴的な地域です。
物事が生まれるには法則があり、それは温度差によって対流が起こり、構造が生まれるというもの。これを味噌汁の様子に例えて「味噌汁理論」と呼んでいます。対流が生まれる場所に種を撒くことで花がさき、実をつけます。スマートシティ会津の取り組みと通じて、テクノロジーで地域に活力をもたらし、地域を効率化させようと頑張っています。
新しい「公」は官と民それぞれが担う意識を持つことが大切
続いて、会津価値創造フォーラムの矢部さんが、故郷である西会津町で地域再生に取り組むご自身の活動を事例に「クリエイティブ人材による地域再生の取り組み」を紹介されました。
矢部:人口減少や限界集落という言葉を聞くようになりましたが、環境負荷を考えると実は人口減もポジティブに受け止められます。システムさえ変えられれば限界集落も決して悲観することばかりではないのだと思います。
今、私は会津の風土性と社会システムのアップデートが必要だと考えていて、民間が社会システムのどんな部分を担えるのかを考えながら活動を続けています。
多様性と持続可能性の時代の到来を迎えて、民でも会津の総合計画を実行できるまちづくりを目指して試行錯誤を続けています。
住民目線の地域活性化が地域の魅力を育む
次に、豪雪地域では避けて通れない「除雪」に新たな視点を加えて、地域活性化に役立てている磐梯町職員の鈴木孝之さんが登壇し、行政職員の目線からの地域活性化の実例が紹介され、そのユニークな語り口に会場からは多くの笑いも。
鈴木:磐梯町では、観光まちづくりを「地域づくり」の手段と捉えて、観光のためというよりも、地域づくりのために地域資源を使おうという視点で観光まちづくりをしています。
地域資源は行政のものではなく、住民のものであり観光事業者ものです。そうした取り組みの延長線上に生まれたのが「ジョセササイズ」です。「除雪」と「エクササイズ」の造語です。降り積もる雪に悩まされるのは磐梯町も例外ではありませんが、これまで苦痛だった除雪をエクササイズにして楽しもうという取り組みです。そうやって自分たちが楽しむことで、最近では他県でもジョセササイズの支部が生まれたり、テレビにも取り上げられたり、少しずつ雪国を楽しむ地域づくりの輪が広がっています。