非常時における地方議員のもう一つの役割は何でしょうか?
今回自分でも気づいたことなんですが、全く政治とは関係ないところで動くということです。
墨田区マスクプロジェクトはまさにそれです。議員って区内で有名な人・・・区内限定有名人、そんな感じの人だと思っています。支援者にいろんな人が居るし、いろんなネットワークを持っている人だと思うんです。
議員の権限を行使せずに人脈だけを使ったという感じですか?
そうです。権限を使わず、区議のネームバリューと言うか存在感だけを使った。
・・・こういうことができるのだと、今回勉強になりました。しかし、それは別に区議会議員でなくてもできることなのかもしれません。
議員が非常時にできることをまとめると、一つは、相談→政策に繋げる動き。不安を解消するためのお答えもそうですけど。
二つ目は、議員の権限を使わずに行う自治的な動き。自分たちがマスクを作って、自分たちが供給するという、議員はサポートするというか、旗を振る役割ですね。
なるほど。それは地域の事業者だったり、ステークホルダーだったり、いろんなものを知っている基礎自治体の議員だからこその動きではないでしょうか? 広域自治体だとまたちょっと違いますよね。
そういうことなんだと思います。現場を持っている基礎自治体の議員だからこそできる動きだと思います。
そんな佐藤さんが、議員になられたルーツを聞かせて下さい。
自分自身が苦学していた時期がありまして、奨学金もらって高校、大学、大学院へ行ったのが大きなきっかけになっています。その時に区の奨学金もらって色んな人に助けてもらいました。だから恩返ししたいと思って、大学に入ってからボランティア活動を始めたんです。保護観察受けている非行少年の更生支援活動をやったのですけど、いまだにこれは続けています。
それから児童相談所の一時保護所で勉強教えたり。そういう困難な状況に置かれている子たちを見て自分も大変だったけど、もっと大変だと気づいて。
元々橋本龍太郎さんに憧れて、政治家になりたいという想いはあったのですが、そういうものと結びついて、こういうことを解決するために政治家になってみたいというのが私の一番の真ん中を貫いているものです。「困っている人に政治の暖かい光を」という想いを常に持っています。
だから『#佐藤寝ろ』とタグ付けされちゃうくらいに動いちゃう。
困っている人を見ると動きたくなっちゃう。マスクも「無いならなんとかしなきゃ!」と。やりすぎて怒られることもありますけど(笑)
まあ・・・でも、この10年間は、そういう一つ一つの困っていることに答えたいというのが自分の原動力になっています。
今後、議会として、非常時にはこう動いた方が良いのになという考えはありますか。
議会は自治体における機関の一つなので、そこでの意思決定は不可欠です。今、各地の議会の動きは3つに分かれでいます。「3蜜」とかを避けてはいるが全く平常運転の議会、閉会してしまっている議会、対策本部作って意見を集約してある程度の合意形成した上で対外的に発表する議会。目指すべきは一番最後のものなんじゃないですかね。
議員個々の活動がありながら、議会としてどう意思決定するかということが求められている気がします。
それに非常時にこういうことがちゃんとできれば、平時ももっと良い議会になるんじゃないかな。
こういう話をすると「議会BCPって必要だよね」という議論によくなりますよね。
23区で議会BCPがあるのは目黒区議会だけです。墨田区議会でもちょうど2月から始めて、本年度以降に防災対策特別委員会で議会BCPをつくることも含めて検討しようというところまで決まっています。目黒の事例は区内外で高い評価を得ています。目黒区議会は議会として統一した行動がとれている。という意味では議会BCPは必要だと思います。
今後、墨田区議会でも制定に向けて動いていきます。
最初の話に立ち戻ると、非常時に議員が・・・本当は議会がですが、何ができるのか、何をすべきなのか、市民も含め皆で考えたいテーマですね。
最後に、佐藤さん、これからやりたいこと、力を入れたいことを聞かせてください。
生活困窮者支援です。生活保護基準の×1.2とか、そういう人たちが一番苦しいと思っています。生活保護になれば医療費が無料になったりしますが、そこよりちょっと上の人たちはそういうものが一切ないわけです。例えば小学校の部活なども結構お金かかるので生活が非常に苦しい。
生活保護は権利の一つですが、それに頼らなくても一生懸命やるという人が居て、相談を受けていると、そういうところへ負担がしわ寄せが来ているのを肌で感じます。特に今回のような時は心配していますが、そういう層をしっかり見てあげるような支援をライフワークとしてやっていますし、これからもやりたいと思っています。
平成27年度に生活困窮者自立支援法が出来て、色々ことがやれるようになりました。その時に議会で戦ったのが、困難を抱える世帯の中学生が高校へ進学できる学力を獲得できるようにするための無料学習支援事業。
私はぜひやるべきだと言ったけれど区は来年度はまだやらないと答えた。粘りに粘って、何とかできたんです。その結果、高校進学率が100%になりました。そういうところに力を入れたい。頑張っている人が報われる社会をつくりたいです。そして、そうした人たちがまた地域に還元したくなるような社会になってほしい。そのためにも、役所が必要な人たちにしっかりとした支援を差し伸べられる、そんな基礎自治体の役所を作りたいです。
佐藤議員、ありがとうございました。
ありがとうございました。
【あとがき】
地方議員に「この人優秀だな~と思う議員さんって誰ですか?」と問うと、何人もの議員から「墨田区の佐藤議員!」という答えが返ってきました。そんな佐藤議員に興味が沸いて、わたくし、昨年くらいから彼のSNSや議会質問をチェックしておりました。
佐藤議員、確かにすごい! 法務の知識と経験を武器に、国や自治体の法制度を隅々まで把握した上での政策提言には脱帽です。さらにその活動量と熱意には圧倒されます。コロナの対応では本当にいつ寝てるのかと心配になるくらいです。
そんな彼が手掛けた「墨田区マスクプロジェクト」。これは話を聞くしかない!とお願いしたところ、区民から『#佐藤寝ろ』、と言われるほどの多忙な時間を割いて取材を受けてくださいました。佐藤議員、ありがとうございます。
【プロフィール】
佐藤篤(さとう・あつし)
墨田区議会議員
プロフィール
1985年墨田区生まれ。早稲田大学政治経済学部を3年次飛び級、同大学院法務研究科修了。法務博士(専門職)。米国・ジョージタウン大学日米LP修了。米国外資系法律事務所にLegal Researcherとして勤務。行政書士試験・議員力検定1級合格。2011年墨田区議会議員選挙に自民党公認で初当選し現在3期目。墨田区議会予算特別委員長。マニフェスト大賞(早稲田大学・毎日新聞社共催)優秀政策提言賞受賞。子どもの事故予防地方議員連盟会長、東京若手議員の会事務局長、自民党町会・自治会制度推進議員連盟(ぬくもり議連)事務局長。1歳児子育て中。
【墨田区マスクプロジェクトの進捗状況(4月20日現在)】
4月17日には、販売店舗第一号として、区内薬局で「墨田区産布マスク」を販売することができました。政府のマスクよりも少しだけ早く手に届けることができたそうです。
現在、無償で販売してくださる小売店舗・区民個人を10か所ほど確保。区民が発案し、区民がつくり、区民が売って、区民が使う、まさに究極の地産地消プロジェクト、少しずつですが結実しているとのこと。佐藤議員のつぶやきからすさまじいスピードで立ち上がった「墨田区マスクプロジェクト」は、今も日々進化しています。
本プロジェクトへの問い合わせはこちらへ https://www.satoatujp.com/contact