「住みよさ県内No.1」を支える独自の地域連携~高松義行・福島県本宮市長インタビュー(1)~

福島県本宮市長・高松義行
(聞き手)一般社団法人 官民共創未来コンソーシアム 代表理事・小田理恵子

 

2025/01/14 「住みよさ県内No.1」を支える独自の地域連携~高松義行・福島県本宮市長インタビュー(1)~

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2025/01/28 まちづくりへの思いと政治哲学~高松義行・福島県本宮市長インタビュー(3)~

2025/02/04 まちづくりへの思いと政治哲学~高松義行・福島県本宮市長インタビュー(4)~

 


 

福島県のほぼ中央に位置する本宮市。人口約3万人のこのまちは、これまで12回も「住みよさランキング」福島県No.1を獲得し、現在も転入超過が続いています。震災や台風、出生数の減少などの影響を受けながらも、なぜこの市は「住みやすさ」を維持し続けられているのか。

「へそのまち協議会」を通じた他自治体との連携や、英国との友好都市交流などの施策を展開し、地域の活性化に成功している秘密を探るべく、2011年2月に就任し、現在4期目を務める高松義行市長にお話を伺いました。(聞き手=一般社団法人官民共創未来コンソーシアム代表理事・小田理恵子)

 

震災をきっかけに「へそのまち協議会」で遠隔自治体と連携

小田 さて、本宮市が「福島のへそのまち」と呼ばれていることを知り、非常に興味を引かれました。この独特な呼び名について、詳しくお聞かせいただけますか。

高松市長 本宮市は福島県の中心に位置することから「福島のへそのまち」と称しています。実は、この「へそのまち」という概念は本宮市だけのものではありません。「全国へそのまち協議会」という組織があり、本宮市もその一員です。

 

小田 協議会は、どういった会なのか教えていただけますか。

高松市長 全国の「へそ」や「中心」を名乗る自治体が集まってつくった協議会です。現在、北は北海道富良野市から南は沖縄県宜野座村まで、全国9市町村が加盟しています。

 

小田 「福島のへそのまち」というコンセプトはいつ頃から生まれたのでしょうか。

高松市長 本宮の「へそのまち」というコンセプトの誕生は、私が30代の頃に遡ります。当時、地域の若者たちと「本宮をどんなまちにしたいか」を議論する中で、「本宮ネーブルシティ構想」というアイデアが生まれました。これは本宮を福島の中心、つまり「へそ」として位置付け、活気あるまちにしていこうという構想でした。

 

小田 協議会への加盟のきっかけは何だったのでしょうか。

高松市長 実際に協議会に加盟したきっかけは、東日本大震災でした。震災直後、福島県全体が落ち込んだ雰囲気になった時期があり、市長に就任した直後であった私は「なんとかしなくては」という思いを持っていました。しかし、あれだけ大きな災害では、近隣の自治体同士で助け合うことは非常に困難でした。そこで、遠隔自治体と交流できないかと思っていたところ、以前から交流のあった協議会の方から加盟を勧めていただき、参加することにしました。

 

小田 遠隔自治体との連携には、どのようなメリットがあるのでしょうか。

高松市長 最大のメリットは、お互いの良いところを気兼ねなく取り入れられることです。近隣自治体との関係は、切磋琢磨したり、助け合ったりする観点から非常に重要ですが、一方で近いが故の遠慮が生まれる場合もあります。しかし、遠く離れた自治体とならそういった心配がありません。

 

小田 協議会の具体的な活動内容を教えていただけますか。

高松市長 定期的に総会を開催しています。そこでは、各自治体の取り組みや課題を共有し、アイデアを交換しています。「この自治体ではこのような取り組みを行っているのか」「そのアイデアは我が自治体でも使えるかもしれない」といった具合に、遠隔地の自治体同士だからこそ、率直な情報交換や施策の共有が可能になっているのです。

 

小田 災害時の連携についてはいかがでしょうか。

高松市長 協議会では災害時の相互応援協定を結んでいますが、これは遠隔地だからこそ有効に機能します。同じ地域が被災した場合、近隣自治体も同様の被害を受けている可能性が高いですが、遠隔地ならば支援が可能です。

 

本宮市の経験に見る復興と交通インフラの関係

小田 本宮市は交通の要衝に位置していますが、東日本大震災時はどのような状況だったのでしょうか。

高松市長 本宮市は確かに交通の要衝ではありますが、震災直後はその利点を生かすことができませんでした。東北自動車道も東北新幹線も大きな被害を受け、しばらくの間機能しませんでした。本宮市は、福島第1原子力発電所から約60㌔の位置にあり、当時いわゆるグレーゾーンとして扱われました。そのため、約2000人の方が本宮市に避難して来られる一方で、本宮市民約500人が他の地域に避難するという複雑な状況になりました。

 

小田 震災からの復興過程で、本宮市の地理的優位性はどのように生かされましたか。

高松市長 ある程度復興が進んだ後は、本宮市の地理的優位性が徐々に発揮され、福島県の中心に位置するという利点を生かすことができるようになりました。特に物流の面では、本宮市は重要な拠点としての役割を果たすことができました。また、復興に必要な資材や機材の輸送においても、本宮市の立地が大きな強みとなりましたね。

 

小田 最近の能登半島地震では、交通アクセスの悪さが復興の妨げになっているという話を聞きます。改めて、交通の要衝にあることの重要性を感じますね。

高松市長 そうですね。能登半島の状況を見ると、交通アクセスの重要性を痛感します。本宮市から職員を派遣して家屋の被害状況調査を行いましたが、現地に到着するまでに6〜7時間かかりました。

災害時には、人や物資の迅速な移動が重要になります。その点、本宮市は交通の要衝に位置しているため、災害時の対応や復興において一定の利点があると考えています。ただし、これは地理的条件の一つにすぎず、真に重要なのは各地域の特性を生かした防災計画と、地域間の協力体制だと認識しています。

 

(第2回に続く)

※本記事の出典:時事通信社「地方行政」2024年11月25日号

 


【プロフィール】

福島県本宮市・高松義行市長高松 義行(たかまつ・ぎぎょう)

1954年生まれ。大正大仏教学部卒。
1995年から旧本宮町議を3期、2007年から本宮市議を2期務める。
11年1月の市長選で初当選。現在4期目。

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