
京都府八幡市長 川田翔子
(聞き手)一般社団法人 官民共創未来コンソーシアム 代表理事 小田理恵子
2026/06/30 行政も政治も知る市長が実践する、信頼から始まる組織マネジメント~川田翔子・京都府八幡市長インタビュー(1)~
2026/07/02 行政も政治も知る市長が実践する、信頼から始まる組織マネジメント~川田翔子・京都府八幡市長インタビュー(2)~
2026/07/07 「生活都市」から、「多機能都市」へ~川田翔子・京都府八幡市長インタビュー(3)~
2026/07/09 「生活都市」から、「多機能都市」へ~川田翔子・京都府八幡市長インタビュー(3)~
意見を出しやすい組織へ
小田 具体的な施策についても伺っていきます。八幡市の魅力やまちづくりについて、現在注力していることをお話しいただけますか?
川田市長 八幡市は住むだけではなく、歴史、文化、自然、それから農業、工業と多彩な要素が詰まった街です。そうした魅力をさらに 対外的に発信していきたいと思っています。
そのために私が重視しているのが、「子育て支援をはじめとする行政サービスの充実」「魅力ある都市空間づくり」「利便性の向上」です。大きくこの3軸で考えています。
中でも、子育て支援で特徴的な取り組みとして、25年9月から「おむつ無料おてがる通園」事業を開始しました。紙おむつとお尻拭きを市が一括で業者に発注し、民間園も含めた保育園等に納入するというシステムです。
無料というところにフォーカスされがちなのですが、この事業で私が実現したかったのは、園に子どもを預ける親御さんや、保育現場の負担を軽くすることです。
これまでは、親御さんがおむつやお尻拭きを園に持参していました。しかも、おむつには一枚一枚に記名して。親御さんにとって、自らの出勤時間に追われながら登園準備をする朝はストレスが大きかったと思います。
そういう「日々の育児のしんどさ」を軽くできる仕組みがつくれたことは良かったと思います。
この施策は、保育現場から上がった意見をきっかけに制度化しました。普段から担当課の職員が市内の園を小まめに回って課題を吸い上げ、こういう制度はどうか? と企画を出した形になります。
小田 担当課がそういう提案を上げてきたということは、職員の皆さんが意見を出しやすい組織になっているということですよね。組織風土はどのようにつくってこられたのですか?
川田市長 意識しているのは、まず首長の二大実権である人事権と予算権をきちんと実効的に使うということです。これらが適切に動かせると、組織は確実に変わっていきます。
それと併せて、ランチミーティングなどを通じて若手も含めた職員の皆さんと直接コミュニケーションを取ることや、課長級以上とは普段から小まめに意見交換することを大切にしています。
そういうプロセスを経て上がってきた企画が実際に通ると、職員の皆さんにとって成功体験になります。
成功体験を積み重ねると、次の提案へのモチベーションになっていく。そういうサイクルが少しずつ回り始めてきたかなと感じています。
小田 職員の皆さんと対話し、後押しするようなリーダーシップを発揮されているのですね。

ランチミーディングの様子(出典:川田市長Facebook)
「最年少女性市長」という話題性を追い風に
小田 率直なお気持ちをお聞きしたいのですが、「全国最年少の女性市長」という肩書がどうしても先行しがちですよね。正直なところ、どうお感じですか?
川田市長 普段は自分の性別や年齢について、取り立てて意識はしていませんが、就任直後に全国的に取り上げていただいたことで、「八幡が全国で有名になった」と市民の皆さんがとても喜んでくださったんです。そういう状態でスタートできたことは、本当にありがたかったと思っています。
小田 話題性がポジティブに働くよう意識していらっしゃるのですね。
川田市長 政治家にとって人気や話題性も一つの力ですから、それを追い風にして政策の実現につなげていけばいいと思っています。
若さや女性であることで、もう一つ良かったこととしては、市民の皆さんが市政を身近に感じやすくなったことです(写真3)。女性やお子さんたちが「あ、市長だ!」と親しみを込めて近寄って来てくれます。
「市長を知ったことで、これまで読まなかった新聞の地域欄を読むようになりました」や「広報誌を読むようになりました」という声も届くようになっています。
川田翔子市長というコンテンツを身近に感じてくださることで、行政に対しても親近感を持ってくださるようになる。それは私にとって、すごくありがたいことです。
「全国最年少の女性市長」というものに対するポジティブな印象や、市民の皆さんとの関係性を生かして、まちづくりに関するワークショップやシンポジウムを意識的に開催するようにしています。
市民の皆さんからの意見を政策に反映する仕組みをつくり、プロセスを見せることによって、市民の皆さんは「自分の意見がまちづくりの案に反映された」と実感してくださるでしょう。
それがまた行政への信頼感につながっていくと思います。

市内小学校訪問の様子(出典:八幡市)
小田 行政への親近感が高まれば、タウンミーティングやワークショップへの参加につながりやすくなります。そこで市民の皆さんが意見を出し、政策に反映されていく過程を実感してもらうことで、行政への信頼感がさらに増す。川田市長は自らの属性を推進力と捉えていらっしゃるのですね。
川田市長 追い風として使えるものは使う、というのが正直なところです。大事なのはその先に何を実現するかですから。
前編のインタビューで見えてきたのは、川田市長が風通しの良い組織風土を醸成する姿です。
こまやかなコミュニケーションを基盤に、カスタマーハラスメント対策として通話記録の全自動データ化システムを導入したり、「書かない窓口」を24年度予算に盛り込んだりと、職員が安心して働ける環境整備と市民サービスの拡充を同時に進めています。
施策を着実にやり切る堅実さと、話題性を市民参画に転化するしなやかさ。その両方を備えることが、川田市長の真の強みなのではないかと思います。
インタビュー後編では、郊外都市の構造的な課題と、川田市長が描く八幡市の将来像について詳しくお聞きします。
(第3回に続く)
※本記事の出典:時事通信社「地方行政」2026年5月18日号
【プロフィール】

川田 翔子(かわた・しょうこ)
奈良県出身。京都大経済学部経済経営学科卒業。
2015年京都市役所に入庁。生活保護ケースワーカーや学校跡地を活用した官民連携事業を担当。
22年に退職し、参議院議員の私設秘書に。23年11月、八幡市長選挙に立候補し、女性最年少(当時33歳)で初当選。市長に就任。

