制度の課題〜お抱えケアマネによる過剰介護プラン
最後は制度の課題についてです。居宅介護支援事業所は、独立型と併設型の2種類に分類することができます。独立型は居宅介護支援事業所単独で運営される事業所であり、併設型は同一または同系列の法人が運営する介護サービス事業所に併設される事業所です。この独立型と併設型の割合は約1対9となっています。つまり、圧倒的に併設型居宅介護事業所の数が多い現状があります。
これには理由があります。介護サービス事業者の選定において、介護支援専門員はケアプランを作成するため、実質的に支配的な立場にあります。従って、介護サービス事業者は、介護支援専門員を自らの法人に囲い込むことによって、自社のサービスに誘導する動機が働きます。居宅介護支援事業所自体は、利益率は低いか赤字であったとしても、介護サービス事業においてそれを上回る利益が見込めるため、総合的には黒字になる可能性が大幅に高まります。
このような併設型居宅介護事業所に雇用される介護支援専門員を、俗に「お抱えケアマネ」と呼んだりします。そして、このお抱えケアマネは、雇用主である法人の意向に逆らうことができずに、ケアプランの作成において利用者ではなく法人の方を向いてしまうことも少なくありません。
例えば、サービス付き高齢者住宅に併設する居宅介護事業所の介護支援専門員が、その利用者に必要以上の介護サービスを提供するケアプランを作成する事例が散見され、国の審議会やマスメディアでもたびたび問題視されています。
もちろん、国としても、区分支給限度基準額ギリギリの過剰サービスが疑われる場合は、市町村でケアプランをチェックする等の指導を求めていますが、チェックする人員の確保もままならず、実効的な対策とはなっていません。また、特定事業所集中減算という形で、居宅介護支援事業所の同一法人への紹介件数が8割を超えた場合は介護保険の支給額を減算していますが、逆の見方をすると8割まで同一法人への紹介を許容している訳であり、根本的な解決となっていません。
介護支援専門員は、法律上その担当する要介護者等の人格を尊重し、常に当該要介護者等の立場に立って、当該要介護者等に提供される介護サービスが特定の種類または特定の事業者もしくは施設に不当に偏ることのないよう、公正かつ誠実にその業務を行わなければならない責務を負っていますが、一部の併設型居宅介護支援事業所では形骸化しており、介護支援専門員の制度の根幹を揺るがす大きな問題となっています。