(3)介護支援専門員の展望

介護支援専門員の課題について、量、質、制度の面から考察してきました。以下、これらの課題解決に対する展望について述べていきます。

量の課題への展望〜テクノロジー活用による効率化

最初は量の課題への展望についてです。2018年の試験における合格者数の激減は、見方を変えると今まで介護支援専門員になるべき能力に欠ける者に対して資格を付与してきたとも捉えることができます(そのため更新研修を強化している)。従って、介護支援専門員の不足分を合格者数の増減で対応することにも限界があります。

そこで、介護支援専門員の業務を効率化し、介護支援専門員がその専門性を発揮することに集中できる環境を整備していくことが必要です。

まず、行政対応や各種事業所への事務作業は膨大であり、介護支援専門員の本来業務の妨げになっています。国や地方自治体においては、制度の設計や運用を簡略化し、現場に負担のかからない介護支援専門員の立場に立った改善を順次行っていくべきです。また、介護業界全体に蔓延するアナログ対応も順次電子化し、業務効率化を推進していくべきであると考えます。

また、ケアプランの作成における定型業務には人工知能を導入し、介護支援専門員の専門性を発揮できる部分に集中できるようにすることも一案です。例えば、株式会社ウェルモは福岡市で人工知能を活用したケアプラン作成の実証実験を開始しています。

さらに、ある程度自立的に考えられる高齢者は、セルフケアプランに誘導していくことも想定されます。当事者である本人こそが、自分らしく生活するための適正なケアプランを求める動機があるからです。このような場面でも、人工知能によるケアプラン作成サポートは、効果を発揮すると考えられます。

質の課題への展望〜真面目な介護支援専門員が報われる制度に

次は、質の課題への展望についてです。現行の介護保険制度の問題点は、その資質を向上させ、真面目に頑張る介護支援専門員への動機付け設計が弱い点です。逆の見方をすると、不公正に寛容であるとも言えます。

まず、構造的に不公正が生じやすい、併設型居宅介護支援事業所へのチェックを徹底する必要があります。また、外部からのチェックには限界があるので、内部からの通報制度も整備し、通報者である介護支援専門員等を守ることも大切です。

次に、独立型居宅介護支援事業所をもう少し増やす動機付けを制度に加えることは、検討に値する余地があります。公正・中立な立場でケアマネジメントを行うために、独立型居宅介護支援事業所を営む介護支援専門員は少なくありません。しかし、年々介護支援専門員だけで生活を成り立たせていくのが難しくなっているとの声があります。また、居宅介護支援事業所が赤字部門でも、総合的に利益を上げられる仕組みが併設型居宅介護支援事業所にはあり、介護支援専門員の公正・中立な立場を構造的に脅かしています。明らかに制度的な欠陥があると指摘しておきます。

さらに、前述したテクノロジーによる業務効率化も踏まえて、介護支援業務負担を軽減し、より専門的な業務に特化させていくことは、介護支援専門員、利用者双方にとって利益のあることです。介護支援専門員の更新研修などの機会において、テクノロジーの活用の仕方を学ぶ重要性もますます高まっていくでしょう。

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