株式会社Public dots & Company
株式会社スカラ
一般社団法人官民共創未来コンソーシアム
2021/09/07 官民共創に関する自治体意識調査2021(1)「熱意と推進力の差が生まれる要因」を読み解く
2021/09/09 官民共創に関する自治体意識調査2021(2)「熱意と推進力の差が生まれる要因」を読み解く
2021/09/13 官民共創に関する自治体意識調査2021(3) 現実とのギャップを言語化し「解像度」を高める
2021/09/16 官民共創に関する自治体意識調査2021(4) 現実とのギャップを言語化し「解像度」を高める
2021年6月、一つの衝撃的なニュースが全国に流れました。それは「京都市が財政破綻寸前」というニュース。もう少し正確に表現すると、2028年にも「財政再生団体」に転落する恐れがあるというものでした。
財政再生団体になれば、財政再生計画を作り、総務大臣の同意がなければ地方債が出せなくなります。実質的な国の管理下に置かれるため、よく「企業の倒産」に例えられるのは公務員の皆さんはよくご存じでしょう。
もしかしたら、行政関係者の方は、京都市のニュースにはそれほど驚かなかったかもしれません。なぜなら、京都市の財政が相当厳しい状況であることは、関係者の間ではそれなりに知られていたからです。
とはいえ、ひとごとではありません。日本はバブルの崩壊以降、長らく経済の停滞が続き、赤字国債の発行などにより公共事業で経済を支えてきたこともあり、政府や地方自治体の累積債務は増大する一方です。気付けば、少子化・高齢化が加速し、目に見えて自治体の財政的制約は強まり、加えて、社会・経済の成熟化に伴う公共サービスのニーズは増え続け、複雑化、多様化、高度化の一途をたどっています。
「財政は厳しいのに、一体、どうしたらいいんだろう?」と、途方に暮れている自治体職員も決して少なくないはずです。
こうした背景もあって、この20年を振り返ると、民間企業の経営手法を公共政策にも取り入れる「ニューパブリックマネジメント」が日本でも幅広く議論されました。
業務委託に始まり、指定管理者制度やネーミングライツ、PFI、公募プロポーザル、近年だとソーシャルインパクトボンドなど、地方自治体が施策を実施するプロセスの中に、民間企業のノウハウを取り込もうとする動きが加速してきたのは、ご存じの通りです。
コロナで加速したSDGsへのシフトと官民連携
ただ、こうした官民連携/官民共創はその第一線で活躍している人ほど、多くの悩みにぶつかっているのではないでしょうか。
せっかくいい事例を見つけても「それは大都市だからできたんでしょ?」とか「小さな自治体の事例はうちには参考にならないよ」といった具合に上司や議会の理解不足という壁もあるでしょうし、官民連携/官民共創を進めると「自分たちの仕事がなくなるのではないか?」あるいは、「自分たちの仕事が増えるのではないか?」といった理解不足から生まれる誤解もあることでしょう。
日本の長い間の慣行もあって、官民連携/官民共創はまだ道半ば。
行政、民間企業双方にとって、オープンでフェアな、官民連携/官民共創の土壌が育っていると言える状況には至っていません。
一方、社会を取り巻く環境は大きく変貌を遂げようとしています。デジタル技術の著しい進化を背景に、事業と行政が近接しつつあります。これまで行政が取り組んできた公益をビジネスでカバーしていく時代に差し掛かろうとしています。
2020年に経済産業省が打ち出した「SX(サステナビリティー・トランスフォーメーション)」はまさに、ビジネスのサステナビリティーと、公共のサステナビリティーを両立していく時代へのシフトを唱えるものです。
そして、こうした動きを加速したのが新型コロナウイルスです。テクノロジーを活用してできることがあるのに、行政と企業のコミュニケーションの取り方が確立されていないため、さまざまなストレスが起きていることが今でも随所に見られます。
今、経済活動においてはROE(自己資本利益率)経営からSDGs(持続可能な開発目標)経営への移行が叫ばれており、民間企業もビジネスを通じた社会課題の解決に高い関心を示すようになっています。
時代が明らかに次のフェーズに移りつつある中で、官民連携/官民共創をめぐっては、個別の事例は各種メディアを通じて情報発信/共有されているものの、メタ(高次)な視点での情報共有はまだ少ないのが実情です。
官民連携の実務経験者、公務員104人に聞く
そこで今回、共創型官民マッチングプラットフォーム「逆プロポ」の運営事務局を務める株式会社Public dots & Companyと株式会社スカラは、一般社団法人官民共創未来コンソーシアムと共同で、官民連携/官民共創に関する実務者アンケートを実施しました。
広域自治体から政令指定都市、人口が数千人の町村など、全国さまざまな自治体の官民連携/官民共創の実務経験者104人から回答があり、分析したのが「官民共創に関する自治体意識調査2021」(https://gyaku-propo.com/download)です。
回答者の中には副市長や町長なども含まれており、官民連携/官民共創に関する意識や課題など、現場を持つ公務員の人たちならではの、生の声が集まりました。
本稿では、この実務者アンケートの結果を参照しながら、「熱意と推進力の差が生まれる要因」について分析したいと思います。
実施期間は2021年5月1日から31日までの1カ月間。オンラインで実施しました。アンケートを実施するに当たり、心理的安全性を担保するために、「(所属自治体など)個人を特定しない」「組織の公式見解を求めていない」ことを明記しています。
各種公務員コミュニティーや一般財団法人の協力を得てアンケートを実施した結果、104人の公務員から回答を得ました。
まず、回答者が働いている自治体の区分について見てみましょう(図1)。都道府県が16人、政令指定都市が17人、市が59人、町村が12人。
人口規模で見ますと、100万人以上の自治体から20人、50万人以上100万人未満が13人、30万人以上50万人未満が7人、10万人以上30万人未満が31人、1万人以上10万人未満が28人、1万人未満が5人でした(図2)。
また、「あなたの自治体には官民連携/共創のための専門部署はありますか?」との質問に対して、「ある」との回答が50人、「ない」が48人、「現在検討中」が5人、「以前検討したことがある」が1人でした(図3)。
官民連携/官民共創の実務経験者へのアンケートであるため、専門部署を有するかという質問に対しては、「ある」と「ない」が拮抗しましたが、一般的には専門部署を持っている自治体はまだ少数でしょう。
そういう意味では、今回のアンケート調査は今後の官民連携/官民共創の未来トレンドと言っていいと思います。また、現在検討中との回答もあり、社会情勢の変化を敏感に捉えている様子もうかがえました。
アンケートに協力してくれた方々の所属部署は、企画系が21人と最も多く、財務系が6人、情報/デジタル系が5人と続きました。
このほか、観光や地域振興、まちづくり、インフラ、福祉、教育と幅広い分野から回答があり、官民連携/官民共創の対象領域が広がっていることも確認できました。
(第2回につづく)