マイクロプラスチックがどこからどのように海洋に流れているのか詳しいことは判っていませんが、9割が陸上由来だという説があります。今回の調査はその流出経路と製品等を洗い出すことにありましたが、その際に流出経路の可能性の一つとしたのが「下水道」です。下水管を通ったプラスチックが、さらに下水処理施設を通り抜けているのではないか?と考えられるからです。
特に汚水と雨水を同じ管で流す合流式下水道は、降雨時に汚水を含んだ未処理水が河川や海に放流されることがあります。筆者は2016年の決算審査特別委員会で川崎市における未処理水の放流日数について確認したことがあります。そのようなデータは取っておらず、ポンプ場一カ所での未処理水放流日数を日誌から推測して答弁していただいたのですが、それによりますと雨水滞水池への流入日数が73日で、そのうち未処理水が放流された日数が40日、平成23年から5年間の合計では降雨日数が494日で、うち未処理下水放流が181日あったということでした。年平均では36日と、決して少なくない日数であるといえます。
未処理水にはプラスチックゴミが含まれる可能性は高いと考えますが、では下水処理場で処理した後の水についてはどうでしょうか。今回の調査では下水道処理場の放出口近くの河川での調査は実施しましたが、下水道処理場での調査は行っておりません。処理場を管理する市に委ねるか、全面的な協力を得るしかないからです。
全国で初めて下水道調査を実施した横浜市
下水道処理場における水質調査は、シアンやカドミウムなどの有害物質を初め、BODや水素イオン濃度など、下水道法で定められた45項目について実施していますが、その中にマイクロプラスチックは含まれていません。法令に基づく調査の対象となっておらず、検査方法も確立していないため、自治体が積極的に下水道におけるマイクロプラスチック検査を行う状況にはないといえるでしょう。
さて、そのような中で、試験的にではありますが、下水道処理場でのマイクロプラスチックの調査を行った自治体があります。横浜市です。
横浜市では2018年の夏から秋にかけて、3か所の水処理センターで流入水と放流水の両方で調査を実施しています。横浜市の公表している「下水道におけるマイクロプラスチックの基礎的調査」資料によると、処理センターのうち2カ所は流入水からマイクロプラスチックが検出され、1箇所は流入水と放流水の両方から検出されたとのこと。
表:調査結果概要(横浜市資料より抜粋)
ただしこれは、試験的な調査であり、資料中では採取する水量や固形物を濾しとるメッシュの大きさなどによって結果が変わる可能性も指摘されております。横浜市では今後も継続的に調査を重ねていくとしており、その動向には引き続き注目していきたいと考えています。
さて、下水道処理場でのマイクロプラスチックの検査手法が確立され、下水道からの流出が確認されれば『ポイ捨てごみを減らしてもマイクロプラスチックの流出は無くならない』ということになります。今回調査で明らかになった『人工芝など屋外にあるプラスチック製品の破片が流出する』問題とあわせて、下水道からの流出をどうやって抑えるのか?を考えていかねばなりません。
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